伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「最新の雇用・失業統計は何を示しているか」 (5/6)

 厚労省と総務省の最新統計について、伍賀一道さん(金沢大学名誉教授)から「簡単な紹介とコメント」を寄稿していただきました。新型コロナの影響が出始めた時期の雇用統計についての貴重な分析です。
 筆者の主著については、森岡孝二さんがエッセイ第281回「書評、伍賀一道『「非正規大国」日本の雇用と労働』新日本出版社」で紹介されています。

最新の雇用・失業統計は何を示しているか

伍賀 一道    

 去る4月28日に雇用・失業に関する2つの代表的政府統計が公表されました。1つは厚生労働省「一般職業紹介状況」(職業安定業務統計)、いま一つは総務省「労働力調査(基本集計)」です。いずれも本年3月分の動向を示しています。後で詳しく触れますが、これらの統計では失業の大幅増加はうかがえませんが、今後の雇用・失業情勢の悪化を予感させるものです。

 厚生労働省「一般職業紹介状況」はハローワーク(公共職業安定所)が受理した求人数と求職申込み件数についての統計です。民間の人材ビジネス(職業紹介会社)が扱った求人・求職状況は反映していません。3月の有効求人倍率(有効求人件数÷有効求職件数)*は1.39倍でした。2月よりも0.06ポイント、昨年3月に比べると0.23ポイント低下しました。3月に新規にハローワークに申込みのあった求職件数に対する企業から求人申込み数の割合(新規求人倍率)は2.26倍でした(図1)

 3月の新規求人数は大幅に減少したのですが、それ以上に新規求職申込件数が減ったため、2月に比べ新規求人倍率が上昇しています。コロナウイルスの感染を警戒し、ハローワークにでかける人が減ったものと考えられます。なお、今年1月の新規求人倍率の大幅低下は新規求人件数が大きく減少したことによるものです。
(注*)ハローワークに申し込まれた求人および求職は3か月間「有効」です。したがって3月の有効求人件数と有効求職件数には1月分と2月分も含まれています。

図1 有効求人倍率、新規求人倍率の推移(季節調整値)

この記事を書いた人