「テレワーク2年」にあたり年頭雑感

新しい年が明けました。いただいた年賀状には「今年こそ良い年でありますように」の言葉が多くみられました。しかしながら、正月初っ端からの感染拡大に首都圏に、「緊急事態宣言」が再び出されようとしています。
昨年は、働き方から視るならば「テレワーク」や「在宅勤務」という言葉がメディアに踊り、「テレワーク元年」ということができるほど、感染拡大対策の一つして推奨されたことからは、今年は「テレワーク2年」と名付けることもできます。この度の「緊急事態宣言」にも「テレワーク」への対応が謳われています。
さて、「テレワーク2年」の年頭にあたり、「テレワーク」という言葉について考えてみました。事業所の外部で仕事をする形態を表現するときに、「テレワーク」とするか、「リモートワーク」とするか、いつも迷ってしまいます。あるときには「テレワーク」を使い、しばらくたって読み返して、次の時には「リモートワーク」を使った方がいいのでは、という迷いながら使い、その後いろいろな文献やメディアを眺めると、やっぱり「テレワーク」を使っているほうが多いな、と、心の中でまたまた迷いがあります。皆様はどちらを使いますか、あるいは使い分けておられますか、お聞きしたいとは思っています。どちらでもいいではないか、というご意見もあるでしょう。そこで年頭の機会に、それぞれの語源をたどりながら考えたいと思います。
「テレワーク」は tel と work をくっつけた言葉です。 研究社『リーダース英和中辞典』によると、 tel は接頭辞であって、tel- tele- telo- の後ろに語句をつけて、「遠距離の」という意味の連結語を作ります。この辞典には、telecamera:望遠カメラ、telegram:電報、telegraph:電信、telephone:電話・電話機、telescope:望遠鏡、television:テレビ放送、telex:テレックスなど、距離を隔てて行う機器や手段に名付けられていていますが、telepathy:精神感応などと違う傾向の言葉もあります。さらに tel- のもう一つの意味に「末端・目的・完全な」があり、telemark:着地点が掲載され、確かスキージャンプに出てくる用語です。そしてこの辞典にはなんと「テレワーク」の原語 telework が掲載されていて、「遠距離通信を利用して自宅などで仕事をする」と説明し、同意語として telecommute を上げています。commute は「取り換える、交換する」という意味で、 communication:コミュニケーション・伝達・連絡の語源であり、仕事は連絡を取り合いながらするのだからでしょうか、telework と telecommute は同意語となっています。堂々と英和辞典に掲載されていますので、これで「テレワーク」で決まりでしょう。
それでも「リモートワーク」の言葉はなぜ使われるでしょうか。次に「リモートワーク」について調べてみましょう。同辞典では、remote は「遠く離れた・遠方」となっていますが、もう一つ「遠隔操作による」というのもあります。そこから派生して、remote control すなわち「遠隔操作、リモコン」という意味ができています。在宅勤務をしていて、会社からの指示に従って仕事をしている姿としては、単に遠く離れて仕事をしている「テレワーク」よりも、会社から遠隔操作されて仕事している姿から、「リモートワーク」の方がふさわしいように思います。ただし、remote には辞典にもう一つの意味がありました。「縁の薄い・関係の薄い、気持ちの離れた・よそよそしい」という意味です。さて、会社から離れて仕事をしているうちに、会社から「気持ちが離れて」しまい、なにか「よそよそしい」感じがしてしまうのでしょうか。それを象徴するかのように、新年の新聞紙上には、「テレワーク」では働くモチベーションが低い、士気が下がると感じている人が増えている、との調査結果が掲載されていました(日本経済新聞2021-01-05)。「テレワーク」を続けていると、次第に会社から心が離れて行って、フリーランサーへの道を進む人が増えているのかもしれません。
ということで、このような働き方には、遠隔操作される仕事であり、またよそよそしい働き方になるのでは、という意味を込めて、「リモートワーク」と呼ぶことにしようと思っています。皆様はどのように思われますか。高田好章・執筆

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