政府が進めている看護師の日雇派遣に対して、2021.2.4、日本医労連が反対声明を公表しました。
このAsu-netブログでも関連情報を集めています。→政府による看護師の日雇い派遣容認の動き(21.2.22)
「社会福祉施設への看護師の日雇派遣」の解禁に断固反対する声明
2021年2月24日
日本医療労働組合連合会
中央執行委員会
1月29日、厚生労働大臣の諮問機関にあたる労働政策審議会の部会で介護・障害福祉施設への看護師の日雇い派遣を認める労働者派遣法の政令改正案が了承された。介護施設等では看護師の確保が困難な状況があり、「突発的な欠員jへの対応として「日雇い派遣」に一定のニーズがあること、また、離職中の看護師の中にも派遣労働者として短期就業を希望するものが一定程度存在することが実態調査によって確認されたことを理由として挙げている。厚生労働省は、2月中の公布、今年4月からの施行を予定している。
「日雇い派遣」は2012年の労働者派遣法の改正によって原則禁止とされた。その背景には、適正な雇用管理が行われず、労働災害が多発していたことや、低賃金で不安定な雇用の原因となっていたことなどが挙げられる。そうした問題を解消し、労働者を救済することを目的として法改正が行われた。しかし、今回の解禁にあたって提案されている対応策は、派遣元による就業条件の明示と派遣先への労働者派遣法上求められている責務の履行といったことのみである。派遣先となる介護施設等の中には、適正な労働時間管理や労災防止措置等の使用者責務が果たされているとはいいがたい施設も多く、当該対応策をもって過去にあった問題を解消するに足りるものとは到底言えない。ましてや、低賃金・不安定雇用の問題については一切の対応策は示されておらず、議論のすすめ方としておよそ適正とは言えない。そもそも、介護施設等で看護師の確保が困難となっているのは、過酷な労働環境と低廉な賃金が根本的な原因であり、「日雇い派遣jの解禁で対応することは根本原因を漫然と放置することに他ならない。何より、利用者の個別性を尊重し多職種によるチームケアを重視しなければならない介護の現場に短期雇用の派遣労働を導入することは、利用者や派遣される看護師、その他の職員に混乱と負担をもたらすことにもなりかねない。この点で言えば、介護施設等に看護師の労働者派遣を認めている現行の制度自体にも問題があると言わざるを得ない。昨今、介護・福祉現場の人材確保をめぐって、さまざまな形で対策が打ち出されている。
介護分野への外国人技能実習制度の導入、新たな在留資格としての「介護j の創設、介護予防・日常生活支援総合事業等で、の元気高齢者やシノレバー人材センターの活用、2021年4月の介護報酬改定では、介護施設の人員配置基準や夜勤配置要件の弾力化も打ち出されている。そして、今回の社会福祉施設等への看護師の日雇い派遣の解禁である。いずれも、人材不足の根本的原因である労働環境と処遇改善から目を背けるもので、同時に労働者や利用者に一方的な負担を強いるものである。
日本医療労働組合連合会(日本医労連)は、社会福祉施設への看護師の日雇派遣の解禁に断固反対するとともに、看護師や介護従事者が人間らしく働き続けられるよう、大幅増員や介護報酬引き上げ、保険料や利用料負担軽減など、誰もが安心して活用できる介護制度実現をめざして奮闘する決意である。
以上