以下、城塚健之弁護士が昨日、民法協メールで流された速報メールです。(H)
本日、大阪高裁において、枚方市事件(非常勤職員に対する一時金・退職金支給
の適法性が問われた事件)の控訴審判決が言い渡され、市長及び補助参加人(非
常勤職員=私たち)が逆転全面勝訴しました!
(裁判官 三浦潤(裁判長)、比嘉一美、井上博喜)
(補助参加人の弁護団は二つに分かれておりまして、自治労連が豊川義明、城塚
健之、河村学、中西基、自治労が小川正、北本修二、長島靖久、七堂眞紀)
しかも、その内容がすばらしいのです。
(判決要旨)
1 「普通の労働者の労働時間と同程度」勤務する職員は「常勤」であるから、
地方自治法上一時金や退職金を支給しうる。「非常勤」と呼称されていることに
法的な意味はない。
2 給与条例主義については、具体的基準や数値が条例に定められていなくても
、給与の額及び支給方法についての具体的事項が規定されており、具体的な額や
支給方法を決定するための細則的事項を規則に委任しているに止まる場合は給与
条例主義の趣旨を損なうものではない。
(注:1審判決は、この論点について、条例だけで金額決定の具体的基準が読み
取ることができなければいけないので規則への委任は違法として、敗訴させられ
ていました)
3 任用手続が公序良俗に反するとか重大かつ明白な瑕疵が存するなどの特段の
事情のない限り、支給された給与については、職員は職務に従事したことの対価
及び生計の資本として受け取ることができ、これを不当利得として返還すべき義
務は負わない。
(感想)
1に関する判断は、裁判所によって若干表現や範囲が異なりますが、実質的に常
勤であれば地方自治法上も常勤として扱って手当を支払ってよいという判断は、
もはや裁判所の考え方として定着したといっていいのではないでしょうか。
1996年に自治労連弁護団で作成した臨時非常勤職員の地位向上をめざす意見
書で打ち出した見解がこうして裁判所の判断として定着しつつあることに喜びを
感じます。
2に関する判断は、今回の大阪高裁判決が最も力を入れて書いているものです。
本件控訴にあたり、自治労連弁護団は晴山一穂教授(行政法)にお願いして鑑定
意見書を作成していただきましたが(労旬1703号(昨年の9月上旬号)に掲
載)、大阪高裁判決をこれをほぼ全面的に採用しています。
3は、おそらく新判断です。
1、2の判断があれば、それだけでこちらの勝利という結論に至るはずなのに、
あえて、3の判断を示したということは、本件のように、法の不備による矛盾を
現場の公務員に(特に官製ワーキングプアとして働く人たちに)しわ寄せするよ
うな裁判は許されないという大阪高裁の価値判断が表れているといえます。
まことに正義にかなった、しかも、各地で起こされているこの種の住民訴訟の中
ではおそらく最も高水準の、名判決だと思います。
(本日の勝利報告集会は涙、涙の集会でした)