第105回 猛暑で熱中症などの労働災害が多発

朝夕は少ししのぎやすくなりましたが、日中はまだ猛烈に暑い日が続いています。この夏は、各地で人の体温を超える気温、なかには40度近い高温が記録され、8月の大阪の連続猛暑日は14日で観測史上最長となりました。

報道によると、今年5月末以降の熱中症による医療機関への搬送者は5万人を超え、搬送直後に死亡が確認されたのは168人に上ります(数字は消防庁の速報値)。このなかには、エアコンがない、あるいは電気代を節約せざるをえない生活困窮者や高齢者などの社会的弱者が多いと言われています。

異常な猛暑は、工場などの労働現場の災害を多発させています。厚生労働省HPの「労働災害による死亡者の大幅増加を受け、緊急対策を実施」と題された報道発表資料を見ると、8月公表の速報値で、労働災害による今年の死亡者数は574人で、前年同期に比べて66人(13.0%)増加した、とあります。そのうち、職場における熱中症による死亡者数は33人だったそうです。

8月末に会った日産の九州工場で働いている親戚は、この猛暑で工場のなかがあまりに高温多湿になりみんな熱中症になりそうだと言っている、と話していました。

いうまでもないことかもしれませんが、工場にかぎらず、仕事中の熱中症は不可避的な自然災害ではありません。厚労省の「職場における熱中症予防対策」の点検項目にも出ていますが、通風・冷房設備の設置、連続作業時間の短縮、休憩場所の整備、水分・塩分の摂取、作業中の巡視、労働者の健康状態の把握などのいかんによっては防ぐことができる災害です。今年の猛暑による熱中症など労災事故の多発は、こうした使用者としてなすべき措置や配慮が不十分であり、コスト節約から労働環境が悪化し危険作業が増えていることを示唆するものです。

3年前に沖縄の宮古島に移住した元ゼミ生からの便りによると、今年、宮古島では猛暑日は1日もなかったそうです。「夏は東京や大阪より涼しいんじゃないか」とも書いてありました。私は大阪に長年住んで、日本で一番暑いのは大阪ではないかと思っています。それにしても、東京や大阪が沖縄より暑いというのは、自然現象では説明のつかないことじゃないんでしょうか。

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