共同通信社 2014年6月30日(月) 配信
厚生労働省の集計で2013年度、仕事が原因で心の病になり労災申請した人が過去最多だった。長年、過労死問題を研究してきた関西大学の森岡孝二(もりおか・こうじ)名誉教授は「働き盛りに対するパワーハラスメントやいじめが深刻化している」と指摘し、実態を詳しく調べるよう訴えている。
森岡氏によると、08年のリーマン・ショック後、業績不振で残業が減った企業が増えたため、長時間労働などが原因で脳・心臓疾患で亡くなる過労死の労災認定数がいったんは減った。
だが心の病については労災の申請、認定ともに増加傾向で、申請数は01年度から5倍超に増加。13年度は申請者の約8割が20〜40代で、働き盛りの層に集中した。森岡氏は「若い世代には心の病で仕事を辞めてしまい、治らず復職できない人も後を絶たない」と話す。
過労死、過労自殺をめぐっては、生前の労働時間などの資料を遺族が集めきれず、労災申請に至らないケースも多い。
大手メーカーに勤めていた男性はリストラに遭い11年に退職。再就職もうまくいかず、翌12年、49歳でうつ病のため自殺した。男性はリストラに納得できず、退職後に会社の前に現れ、抗議したこともあったという。
父親(71)によると、男性は在職中から職場でのパワハラに悩み、心療内科に通っていた。しかし、それを知ったのは男性の自殺後。父親は労災申請を検討しているが「息子は生前にパワハラを受けた話をしなかった。申請のために必要な情報が少ない」と訴える。
20日に成立した過労死等防止対策推進法は国が取る対策として、過労死の実態の調査研究を盛り込んだ。法制定に尽力した森岡氏は「まずは労災申請時の資料を詳しく分析して、どういう人が過重労働に追い込まれているかを調べるべきだ」と提言している。