松下PDP事件最高裁判決について 原告弁護団および支援団体

2009年12月18日なかまユニオンのブログより

PPDP偽装請負事件最高裁判決にあたって

2009年12月18日
被上告人(一審原告)吉岡力氏 弁護団

 本日、最高裁は、PPDPの雇用責任を認めた大阪高等裁判所の判決を破棄し、吉岡氏の地位確認請求を棄却する不当判決を下した。

 判決は、PPDPが吉岡氏を指揮命令し、労務提供を受けるという労働契約上の使用者として振る舞ってきたPPDPの雇用責任を認めた大阪高等裁判所の判決を覆し、PPDPと労働者の契約関係を否定し形式上の雇用主である請負会社の契約関係を理由にPPDPの雇用責任を不問にする判断をした。かかる判断は、広く製造業で偽装請負等の違法な就労状態が継続している企業の責任を放置する結果を招くものであり、実際に労働者を使用している派遣先(発注先)企業に対し、労働者に対する契約上の使用者責任があることを免罪するものである。現在の雇用情勢に対する問題意識を欠いた判断であって到底容認出来ない。

 吉岡氏は、製造業であるPPDPによる偽装請負に対し2005年5月26日、全国に先駆けて、大阪労働局に対して是正申告を行い、就労先企業であるPPDPに対して直接雇用を求めた。しかるにPPDPは、いったんは直接雇用をしたものの、吉岡氏を帯電防止設備と称して黒いテント内で作業させることで、他の従業員から隔離し、竹串でディスプレイ画面に付着した不純物をこそげ落とさせるというおよそ前時代的で不必要な業務に従事させ、精神的・肉体的苦痛を与えた上、その事に対する吉岡氏の抗議も無視し、契約から僅か5か月後の2006年1月31日をもって吉岡氏を雇止めにしたという不当なものであった。

 2007年4月26日に言い渡された大阪地裁判決は、PPDPの雇用責任を認めず、嫌がらせ行為に対する慰謝料のみを認めた。控訴審の大阪高等裁判所は、2008年4月25日、大阪地裁判決を変更し、PPDPの雇用責任を認めると共に解雇行為に対する慰謝料も認めるものとなった。

 しかし、大阪高等裁判所の判決にも関わらず、偽装請負、違法派遣はなくならず、2008年末、多数の労働者が大量の解雇される派遣切りが横行した。
 本日の判決は、このような社会状況の下で、違法行為を行った企業の雇用責任を司法が積極的に認めていくべきであるという労働者の声に背を向けるものであり、到底容認できない。

 しかし、他方で判決は、吉岡氏に対する嫌がらせ行為に対する賠償だけでなく、有期5か月での雇い止め行為について、「雇い止めに至る上告人の行為も、上記申告以降の事態の推移を全体としてみれば上記申告に起因する不利益取扱いと評価せざるをえない」として不法行為性を認め慰謝料を認容した。雇い止めが偽装請負を摘発に対するパナソニックの報復行為であると認定したものであり、違法の摘発に対して企業の報復を戒め、法律に則った行動を求めたと評価できる。裁判所が示した違法派遣を正す行為が正当であることを裁判所も認めざるを得なかったことを指摘しておく。

 私たちは、今後も、雇用責任をあいまいにした司法の姿勢を正す共に、吉岡氏の職場復帰を今後も支援していく決意である。                                               以上

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松下PDP事件最高裁判決についての見解

2009年12月18日
吉岡さんを松下電器の職場に戻し、人権侵害・不当な雇止めをなくす会

最高裁は黙示の労働契約を否定、偽装請負に対する企業責任を免罪した!
ただし、隔離テントでの報復的人権侵害行為・雇止めに関する損害賠償を認める!

 最高裁第2小法廷は、松下PDP事件について、大阪高裁原判決を破棄し、松下PDPと吉岡力との雇用契約関係を認めず、人権侵害行為と雇止めに関する慰謝料支払いのみを認めるという不当な判決を下しました。

 本件偽装請負は、松下PDPによる意図的な違法行為であるにも関わらず本判決により、松下PDPにはほとんど何らの負担も生じない結果となります。最高裁判決は、これらの違法行為を解禁し奨励するに等しいものでありまったくの不当判決です。

 法規制を潜脱する目的で意図的に作り出された偽装請負関係とそれをめぐる新たな紛争について最高裁は従来の解釈論に安住することなく、その実態を厳正に分析し、解決の方向を探ることが期待されていました。それは最高裁が、直接雇用の原則を踏まえ、使用従属関係の存在をもって当事者間の労働契約関係の認定をすることでありました。しかしながら、最高裁は権力と資本の番人としての姿をさらけ出し、非正規労働者の雇用問題が社会問題となる今日自らが問われている負託に一切応えることができませんでした。

 我々は、このような最高裁の反動判決にも屈することはありません。最悪の誤りにも絶望することなく忍耐強く闘い抜く覚悟です。

 この判決を持ってしても、松下PDPの偽装請負という犯罪行為、吉岡力に対して執勘に繰り返された人権侵害行為の事実を消すことはできません。最高裁判決も、原判決の人権侵害と雇止めに関する損害賠償についてはこれを認めました。パナソニックの行った行為が違法行為であったことは認定されたのです。雇用関係について否定しながら、一方で雇止めの不当性を認定することは矛盾していると思われます。

 我々の要求はこれまでと変わることはありません。「松下PDPは雇用責任を認めろ!」「人権侵害行為の謝罪をせよ!」「吉岡君を職場に戻せ1」要求貫徹まで、全国のパナソニック関連争議、立ち上がった非正規労働者たちとともに闘い抜く決意です。

 最高裁での弁論開始が決定されて以降、「この裁判は絶対負けてはいけない裁判だ」と、全国の弁護士の皆さんが弁護団に名前を連ねていただき、203名の大弁護団になりました。最高裁闘争を全力で担っていただいた原告弁護団に敬意を表し感謝を申し上げます。

 最高裁への上告棄却や公正判決を求める署名は、累計で団体署名を3,044筆、個人署名を151,834筆提出することが出来ました。これは多くの方々の街頭での署名協力や全国の労働組合・民主団体の協力の賜物です。多くの皆様にこの争議を支えて頂いていることに改めて感謝申し上げます。

 パナソニック総行動を強め、地方自治体に対する要請行動に取り組み、違法行為を認定されたパナソニックへのチェックを強化しましょう。運動の力で、必ず吉岡君をパナソニックPDPの職場に戻しましょう。全国の仲間の争議と連帯して、非正規労働者の要求を束ねて勝利するまで闘います。勝つまで闘います。引き続きご支援よろしくお願いいたします。

具体的な行動方針
12月21日(月)07:15パナソニックPDP茨木工場宣伝
12月21日(月)18:00京阪西三荘パナソニック「吉岡さんを職場に戻せ!」デモンストレーション
1月9日(土)10:00原告弁護団・支援者会議

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