NHKニュース オスプレイ陸揚げ完了 地元は反発

NHKニュース 2012年7月23日

アメリカ軍の最新型輸送機「オスプレイ」を積み込んだ貨物船は、23日朝、山口県の、アメリカ軍岩国基地に到着し、夕方までに合わせて12機がすべて陸揚げされました。

沖縄の普天間基地への配備が計画されているオスプレイを積み込んだ貨物船は、23日朝、岩国基地に到着し、午前8時すぎから陸揚げ作業が行われました。

到着したオスプレイは合わせて12機で、1機ずつ、小型の車両にけん引されて、格納庫の前の駐機場に運ばれました。

機体は、船で運びやすいよう、主翼が胴体と並行になるようおよそ90度回転した状態で積み込まれていたため、兵士が、再び主翼を回転させたり、折り畳まれていたプロペラを外側に開くよう展開させたりして、元の形に戻す作業を行いました。

陸揚げは、作業開始から9時間余りたった、午後5時半ごろ終了し、貨物船は午後6時すぎに出港しました。

オスプレイについて、アメリカ側は、岩国基地で機体の整備や試験飛行を行ったあと、普天間基地に配備し、10月から本格的な運用を始める方針です。

しかし、ことしに入り墜落事故が相次いだため、岩国基地の地元や沖縄では、安全性に対する懸念が高まっています。

アメリカ側は、安全性が再確認されるまで日本国内での飛行を控えるとしていますが、今回の陸揚げについて、岩国市の福田良彦市長が国に厳重に抗議する考えを示すなど、地元の反発はさらに強まるものとみられます。
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オスプレイの特性が“弱点”か

オスプレイについて、航空関係者は、垂直に離着陸するヘリコプターと、水平に飛行する飛行機の2つの特性を持つため、一時的に安定性が弱まる可能性があると指摘しています。
ことし起きた墜落事故のうち、4月にアフリカ・モロッコで2人が死亡した事故では、垂直離着陸モードでホバリングしていたオスプレイが、水平飛行する固定翼モードに切り替えようと、エンジンを前に傾けている最中に、突然、高度を失って墜落したということです。

この事故について、アメリカ軍は、これまでの調査で、ホバリング中に機体の向きが変わり、飛行するのに不利な追い風を受ける姿勢になったため、浮き上がる力=揚力が急に失われたことに加え、その状態で、エンジンを前に傾けたことで重心が前方に移動してバランスを失い、墜落したという見方を示しています。

一方、オスプレイは、主翼の両端に取り付けられたエンジンを、前に傾けたり上に向けたりすることができますが、プロペラがおよそ5メートルと長く、固定翼モードで離着陸すると先端が地面に接触してしまう構造になっています。

このためオスプレイは、エンジンを上向きにしなければ離着陸することができません。

専門家が見る“トラブルの可能性”

国内のヘリコプターメーカーや運航会社などで作る団体の会長を務めた西川渉さんは、オスプレイのように飛行機とヘリコプターの双方の特徴を持つチルトローター機を民間機として導入できないか、20年以上研究してきました。

西川さんは、ほかの航空機との違いについて、「飛行機は翼だけの単純な構造だが、これにヘリコプターの要素を組み合わせているので複雑な構造になる。このため操縦が難しく、それをコンピューターで補っている」と指摘し、コンピューターによる機体の制御が重要なポイントだとしています。

そのうえで、「軍用機のため、厳しい条件で飛行した場合、急激な操作をすると、コンピューターがそれに対応できなくなり、トラブルが起きる可能性がある」と指摘しています。
また、「相次いだ墜落事故を受け、新たなソフトを開発しているはずだが、さらに飛行実績を重ね、ソフトや操縦訓練の方法を改良していく必要があるのではないか」と指摘しています。

 

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