産経新聞 msn 2014.1.20
最終講義で「自分と家族を守る労働者になって」と呼びかける森岡孝二・関西大教授=20日午後3時11分、大阪府吹田市(写真省略)
労働現場に根ざした研究者として、過労死対策をリードしてきた関西大経済学部の森岡孝二教授(69)=企業社会論=が今春退職することになり、20日、大阪府吹田市の関西大千里山キャンパスで最終講義を行った。就職を控えた学生や一般の聴講者約500人を前に「立派に仕事をしながら、自分や家族を守ってほしい」と訴えた。
森岡教授は昭和49年、講師として関西大経済学部に着任し、58年には教授に就任した。研究対象は専門的な経済理論から身近な労働・雇用問題まで多岐にわたるが、社会派の研究者となった転機は、40代で受けた心臓の手術だった。
病室が同じになった会社員が、見舞いに来た部下に入院したことの口止めを命じていた。「会社に知られると『窓際』にされるから」と理由を明かされ、厳しい現実と自らの甘さを痛感。職場の実態に切り込みたいと考えたという。
63年に社会問題になった当初から、過労死の研究を継続。現在は、過労死防止法の制定を求める団体の代表者として遺族と活動を共にしており、若者を使い捨てにするブラック企業問題にも取り組む。
この日の最終講義の演題は「働き方から見た日本経済の半世紀〜学生時代からの自分史と重ねて」。日本の労働者はバブル経済を境に残業時間が増え、欧米に比べても長時間労働の傾向がなおも続いていると指摘した。
また、働く若者の半数が非正規労働者になるなど、就職を取り巻く環境が年々、厳しくなってきた現状などを踏まえて「声を上げれば、世の中は変わる。自分や家族の健康と生活を守る労働者になってほしい」と締めくくった。
経済学部4年の笹川祐輝さん(22)は「森岡先生の教えを意識して、就職活動に取り組んできた。先生には今後も、ブラック企業や過労死問題について世間に伝えてほしい」と感想を話した。