ユニクロ、中国下請けで違法労働 月300時間、是正へ

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朝日デジタル 2015年1月16日

写真・図版:中国広東省にあるファーストリテイリングの下請け工場で働く労働者(SACOMが顔の部分を修整のうえ提供)(省略)
 
 
 衣料品大手ユニクロを展開するファーストリテイリングは15日、中国の二つの下請け工場で、月あたり約300時間の違法な長時間労働が行われていたことが分かり、うち一つの工場では生産計画を見直すと発表した。潜入調査をした香港の労働団体「SACOM」が公表した指摘を一部認めた。手ごろな価格の源泉である中国での「負の側面」が明らかになった。

 違法な長時間労働が明らかになったのは、中国広東省にある生地工場と縫製工場の2カ所。昨年7〜11月の月あたりの平均的な労働時間は、両工場とも300時間前後に及んだ。時間外労働はともに100時間を超え、上限の月36時間を大幅に上回っていた。

 ファストリは違法性を認めており、労働時間を減らせるよう、縫製工場での生産計画を見直す。ユニクロ全体の生産量に大きな影響はないという。

 また、縫製工場では、労働時間の一部はコンピューターではなく手書きで記録されていた。この点についてSACOMは「監査を免れるため」と指摘し、ファストリは「調査中」としている。

 SACOMは、製品に問題があった場合に、従業員から違法な罰金を取る制度が両工場にあったと指摘。罰金の額は50〜500人民元(約1千〜1万円)という。ファストリは「従業員にそのように受け止められる事例があった」として調べる。(北川慧一)

■国際企業、相次ぐ労働問題の表面化

 「あまりの暑さに失神する者もいた。まるで地獄のようだ、と聞いている」。SACOMのプロジェクトオフィサーを務めるアレクサンドラ・チャン氏らは15日に都内で記者会見し、そう指摘した。高温になる機械のそばで、過酷な作業を強いられている従業員がいたという。ファストリの新田幸弘グループ執行役員は「問題点を早急に是正するよう、下請けの会社に強く要請する」とのコメントを発表した。

 国際企業は、調達先で起きた社会問題も責任を負うべきだ、という流れが強まっている。ファストリは2004年に調達先の労働実態について基準を設け、違法労働などをしないよう定期的に監視してきたが、今回の事態を防げなかった。

 中国の労務問題に詳しい弁護士は「中国の労働環境は改善しつつあるが、下請けにとって大量発注の契約は奪い合い。安く引き受けると、長時間労働や残業代未払いといった問題につながる」と指摘する。

 中国の生産現場ではすでに、労働問題が相次いで表面化している。

 10年には、米アップルなどから生産を請け負う台湾・鴻海精密工業傘下のフォックスコンの深圳市にある工場で10人以上が相次いで飛び降り自殺する事態が起きた。同社は12年、多くの法令違反があることを米国の公正労働協会に指摘された。昨年も、米マイクロソフトやヒューレット・パッカードや伊グッチといった有名企業の生産を請け負う工場で、過度な残業などの問題があったと相次いで報じられた。(平井恵美、北京=斎藤徳彦)

 

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