残業代ゼロや派遣法改正に警戒感 連合のメーデー

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朝日デジタル 2015年4月29日
 
写真・図版: 連合のメーデー中央大会で「がんばろう」を三唱する参加者たち=29日午前、東京都渋谷区の代々木公園、杉本康弘撮影(省略)
 
 連合のメーデー中央大会が東京・代々木公園で29日あり、主催者発表で約4万人が集まった。雇用環境の改善や春闘での賃上げで、参加者には明るさもみえた。一方で、安倍政権が進める働き方の見直しには警戒感が強い。組織率が低迷し、政治への影響力も弱まる連合のあり方が問われている。

 中央大会に昨年出席した安倍晋三首相は、訪米中で欠席した。政府を代表してあいさつした塩崎恭久厚生労働相は、有効求人倍率が過去最高の水準になっている点などを挙げて、「雇用情勢は着実な改善が進んでいる」と成果を強調した。

 大会に参加した自動車メーカーの男性は、定期昇給も含めて月給が約4千円上がったという。「車を買い替えたばかりで、わずかでも賃上げはありがたい」。会社員の女性は「会社側が給料を上げようとしているのが伝わってきた」と話す。今春闘では大手製造業を中心に2年連続のベースアップ(ベア)が相次いだこともあって、参加者からは笑顔も見えた。

 連合などは会社員らが参加しやすいように、5月1日近くの休日に合わせて集会を開くことが定着している。この日は天気にも恵まれ、コンサートや子ども向けの野球教室などを楽しむ家族連れもめだった。

 一方で、大会のあいさつに立った連合の古賀伸明会長の表情は厳しかった。

 「まったく理解できない」と批判したのは、年収の高い人の一部には残業代が出なくなる「残業代ゼロ法案」とも呼ばれる労働基準法の改正案だ。長時間労働を助長しかねないためだ。働き手を代えれば企業が派遣社員をずっと受け入れられるようになる労働者派遣法改正案についても、「均等待遇の原則が欠落していて、生涯派遣で低賃金を招く。断固反対だ」と述べた。

 いずれも、これから法案の審議が本格化する。連合は街宣行動や国会前での座り込みを予定し、対決姿勢を強める。集会の参加者には不安を隠せない人もいた。金融関係で働く男性は、残業代ゼロの対象者が年収1075万円以上に限られていることについて、「いずれ引き下げられるのではないか」と話す。

 連合の組合員数は現在682万人いる。非正社員の組織化を進めたことで前年より8万人増えたが、雇用者に占める割合「組織率」は伸び悩む。支持する民主党は統一地方選でも党勢は回復していない。集会では「団結してがんばろう」と拳を上げたが、安倍政権とどう向き合っていくのか、展望は開けていない。(佐藤秀男、末崎毅)

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 〈メーデー〉 労働者の祭典ともいわれ、労働組合が団結を示すために各地で集会やデモ行進をする。米国で1886年5月1日に「8時間労働制」を求めてストをしたことが起源。日本では1920年に東京で開かれたのが最初とされる。今年の5月1日には、全労連系などの集会が予定されている。

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