就活:8月選考、従来と異なる様相…今年どうなる?

http://mainichi.jp/select/news/20150724k0000m040047000c.html
毎日新聞 2015年07月23日

 来春大卒予定者の就職活動が最大のヤマ場を迎える。経団連指針の変更で、昨年より4カ月遅い面接解禁となる8月1日、大手企業は一斉に短期決戦の選考に入る。一方、すでに内定を出した企業は内定者流出に戦々恐々とする。就活時期の後ずれと求人意欲の高まりが重なり、今年の就活はこれまでと異なる様相をみせている。

 「8月1日に面接を開始し、できればお盆までに内定を出し終えたい」。金融大手の採用担当者がいう。銀行や商社、大手メーカーなど経団連加盟企業の選考は1日の解禁後、1〜2週間で内定者を決める「短期決戦型」になりそうだ。

 とはいえ、表向きは指針を順守していても中身は微妙だ。3月以前からインターンシップ開催などで学生を集め、その後、交流会や意見交換会など「面談」名目で学生と接触を重ねてきたところが多い。昨年までと比べると、選考は事実上、長期化している。

 メガバンク志望の慶応大4年の女子学生は「1社あたり4〜5回の面談があったが、選考にどれだけ反映されるのか」と困惑する。

 人材支援会社イノベース(東京)の採用コンサルタント、谷出正直さんは「今年の就活は、業界・業種間で選考や内定出し時期が大きく分散したのが特徴」とみる。外資系・IT企業などが2月までに先行し、3月以降はベンチャーや非経団連企業が続いた。経団連加盟でも人手不足の業種やグループ会社では内定を出しているケースがある。

 さらに昨年までは、大手の人気企業が先に内定を出し、その選考に漏れた学生を他の企業が採用する「敗者復活型」だった。だが今年は人気企業の選考が後になる逆転現象が起き、早く内定を出した企業は辞退者続出への不安が大きい。人材支援会社ディスコ(東京)によると7月1日時点で内定を得ている学生は50.6%だが、うち67.2%は就活を継続している。

 このため、人気企業の面接にあわせ、8月上旬に内定者を呼びだす「囲い込み」が活発化するという予想もある。ある大手ソフトウエア会社は8月1日前後の6日間、内定者を自社のシンガポール拠点に集め研修を行う。

 ただし、超売り手市場だったバブル期のような強い拘束はなさそうだ。前述のソフトウエア会社は希望者を対象とし、素材大手のIT関連会社も8月1日に内定者研修と交流会を行うが「他社面接に行かせないというより、最終的な入社確認をしたい」という。「無理な引き留めは早期離職につながる」(東証上場の流通チェーン)との見方もある。【渡辺精一】

 ◇経団連の採用選考に関する指針◇

 大企業約1300社が加盟する経団連が新卒者採用・選考について定めたもので、2013年9月に従来の倫理憲章を見直し公表した。16年新卒者から、企業説明会など広報開始を大学3年の12月から3月に、面接など採用選考開始は4年の4月から8月に後ずれさせた。正式内定開始は従来通り10月。就活の早期化・長期化が学業の支障となるとする政府要請を受け入れた。

この記事を書いた人