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SankeiBiz 2016.2.25
首相官邸で開かれた1億総活躍国民会議=23日午後(省略)
安倍晋三首相が正規・非正規の雇用形態にかかわらず、同じ仕事には同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の実現を表明した。これに対し経団連の榊原定征会長が「経済界として賛同する」考えを示した。雇用制度の大幅な見直しが必要になるため、現実的ではないとしてきた経済界としては大きな方針転換だ。「首相のリーダーシップ」を重視した賛同表明だが、制度の見直しは手が着いておらず、実現に向けた障害は依然多いままだ。
23日夕、首相官邸で行われた1億総活躍国民会議終了後、榊原氏は記者団に対し「同一労働同一賃金について、首相は日本企業の賃金形態とか、雇用慣行の実態を十分踏まえた上で検討を進めたいといった話をされ、私どもと基本的には軌を一にしている」と語り、共同歩調をとるスタンスを明確にした。
経団連はこれまで、同一労働同一賃金について時期尚早との立場を示し否定的だった。「将来のマネジメントを考え、さまざまな業務を経験させるが、その上で担当させる社員を同じ業務の派遣社員の賃金と同じにすることはできないし、労働組合も反対する」(ある経団連副会長)といった声が圧倒的だ。
企業にとって総人件費の上昇につながる懸念も強く、日本商工会議所(日商)の三村明夫会頭も「経営者にとってはマイナス」と同一労働同一賃金には消極的だった。
背景には、日本型の雇用・労働慣行がある。同じ仕事にみえても働く人の経験や技術力は異なるのが実情。正規雇用では、年齢とともに賃金も上がる年功序列型に組み込まれているのが一般的だ。賛同を表明した経済界でも「日本型の慣行に手をつけてまで同一労働同一賃金を実現することは想定していない」(経済団体首脳)のが本音だ。
同一労働同一賃金で先行する欧州では、欧州連合(EU)指令で、パートや派遣社員など非正規労働者について、職務が同じ正規社員との間で待遇に格差をつけることを禁じている。
これに対し、労働問題に詳しい日本総合研究所の山田久調査部長は「欧州と違って、日本は長期雇用を前提としているため法で強制力を持たせるのは極めて難しい」と指摘する。
このため大きな制度改正を伴わず、正社員などのフルタイム労働者に対し賃金が6割弱とされるパートタイム労働者の賃金格差を圧縮することで議論を進めるもようだ。(平尾孝)