全労働: 「同一労働同一賃金」に関する要請

                                                                             2016年5月30日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
厚生労働大臣 塩崎 恭久 様

                                                                              全国労働組合総連合 
                                                                              議長 小田川 義和

【要請】「同一労働同一賃金」に関する要請

 政府の「一億総活躍国民会議」は5月18日、「ニッポン一億総活躍プラン」を取りまとめられました。安倍首相が「同一労働同一賃金」の実現にとりくむ考えを表明されたもとで、同プランでは「同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善」が掲げられました。

  具体的には、「多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには…非正規雇用労働者の待遇改善は、待ったなしの重要課題」、「再チャレンジ可能な社会をつくるためにも、正規か、非正規かといった雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する」、「同一労働同一賃金の実現に向けて、我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める」、「労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する」、「欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備、非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出する」、「これらにより、正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す」などとされています。

 政府が、「同一労働同一賃金」の実現に踏み出されたことは一歩前進であり、私たちの運動や格差と貧困の是正を求める広範な世論の反映にほかならないと評価するものです。しかし、確認された同プランの内容には、いくつかの不十分点や不明瞭な点があり、その実効性に大きな疑念を持たざるを得ません。
 

よって、今後の具体化論議においては、以下の要請事項を反映させて具体化されるよう、強く求めます。

 なお、同プランにおいて、「同一労働同一賃金」にくわえ、最低賃金の引き上げや長時間労働の是正等を盛り込まれたことは、取りも直さず、「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げ、「雇用維持型から労働移動型への転換」を推進された安倍「雇用改革」の破綻を示すものにほかなりません。その誤りを認められ、残業代ゼロ・定額働かせ放題の労基法改悪法案や解雇規制の緩和の検討等を撤回され、雇用の安定に政策を転換すべきだということを附言するものです。

                                            記

1.法改正に関する要求
 

 (1) 日本国憲法14条1項の精神に立って、「すべての働く人々を対象に、性別や雇用形態をはじめ合理的な理由のないすべての差別を禁止し、同一労働同一賃金、均等待遇原則を実現」すること。そのため、法改正の対象は、労働基準法をはじめ、男女雇用機会均等法、労働契約法、パート労働法、労働者派遣法、最低賃金法とその関連法とすること。

 (2) 法改正にあたっては、上記の大原則のもとに、以下の点を踏まえた内容にすること。

? 性別や雇用形態をはじめ合理的な理由のないすべての差別を禁止すること。また、間接差別の禁止を含む実効あるものとすること

? 「均等・均衡待遇」ではなく、「均等待遇」を原則とすること

? 「人材活用の仕組み」を合理的な理由としないこと

? 「合理的である」との立証は、使用者側の責とすること

? 生計費原則を基本にした人たるに値する水準・労働基準であること

?  非正規雇用労働者の賃金改善が法改正の趣旨であり、「同一労働同一賃金」を理由とした正規雇用労働者の賃金引き下げは許されないことを明記すること

2.「ガイドライン」についての要求

 (1) 同プランでは、「どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドライン」とされており、「合理的である」との理由で現状の待遇差が広範に是認されることになりかねないと懸念される。よって、雇用形態等の違いがあっても、現におこなっている仕事が同じであれば同じ賃金水準とすることを原則とし、現状の大きな賃金格差を是正する実効あるものとすること。

 (2) 同プランでは、「欧州諸国に遜色のない水準を目指す」とされているが、だとすれば、その水準と同時に、当面は同一企業内での差別の是正から開始するにしても、本来的には企業横断的なものとし、また、異なる職種間においても格差是正がめざされるべきである。よって、使用者の恣意的な判断等の余地を可能な限り排除した客観的な基準とするため、以下のILOの判断基準を検討の基本において、ガイドラインを策定すること。

〇  知識・技術(職務知識、コミュニケーションの技能、身体的技能)
〇  負担(感情的負担、心的負担、身体的負担)
 〇 責任(人に対する責任、ものに対する責任、財務責任)
〇  労働条件(労働環境、心理的環境)

 (3) 賃金決定は労使対等原則のもとでの合意が原則であることを踏まえ、使用者の恣意的・一方的な決定を禁止するとともに、賃金・労働条件への不満の相談や不合理であると考える非正規雇用労働者等が是正を簡便に申告できる制度・仕組みを盛り込むこと。

 (4) 検討にあたっては、非正規雇用労働者や男女賃金差別をたたかう(たたかった元)原告などの当事者からのヒヤリングとともに、私たち全労連はじめ労働組合の意見聴取の場を十全に確保し、それらの意見を検討に反映させること。

                                                                                                                         以上

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