外国人技能実習生、異例の過労死認定 残業122時間半

朝日DIGITAL 2016年10月15日
http://www.asahi.com/articles/ASJBF56QNJBFUTIL028.html

写真・図版:来日前のジョーイさん=2008年12月、友人提供(省略)
 
 建設現場や工場などで働く外国人技能実習生が増え続ける中、1人のフィリピン人男性の死が長時間労働による過労死と認定された。厚生労働省によると、統計を始めた2011年度以降、昨年度まで認定はなく異例のことだ。技能実習生の労働災害は年々増加。国会では待遇を改善するための法案が審議されている。

 ジョーイ・トクナンさんは、ルソン島北部の山岳地帯で生活する少数民族の出身。妻レミーさん(28)と、娘グワイネットちゃん(5)ら家族を養うために11年に来日した。岐阜県の鋳造会社で、鉄を切断したり、金属を流し込む型に薬品を塗ったりする作業を担当していた。14年4月、従業員寮で心疾患のため、27歳で亡くなった。帰国まで残り3カ月のことだった。

 最低賃金はもらっていたが、稼いだほとんどを毎月、フィリピンに送金。離れて暮らす娘とテレビ電話で話すことを楽しみにしていた。「リサイクルショップに娘のお土産を買いにいくんだ」。前日、そう同僚に話していたという。

 岐阜労働基準監督署によると、1カ月に78時間半〜122時間半の時間外労働をしていたとされる。労基署は過労死の可能性が高いと判断。昨年、遺族に労災申請手続きの書類を送った。結婚の証明などを添えてレミーさんが申請し、今年8月に労災認定された。一時金として300万円、毎年約200万円の遺族年金が支給されるという。

 ログイン前の続きレミーさんは娘を育てながら、義理の母と暮らす。ほぼ自給自足の生活で、畑の野菜を売って手元に残る現金は日本円で年6万5千円ほどだという。「夫が日本で働いていた証しのようなもので、感謝している。年金で自分たちの家を建てることを考えている」

 ジョーイさんが日本へ行った後に生まれ、父に会ったことがない娘から「いつお父さんは帰ってくるの」と尋ねられることがある。レミーさんは「娘がもう少し成長し、理解できるようになったら夫のことを説明するつもり」と話した。

■増える違法な時間外労働

 技能実習制度は途上国に技術を伝える国際貢献が目的だが、人手不足の現場では低賃金の労働力となっている。安倍政権の受け入れ拡大の方針を受けて急増しており、法務省によると、今年6月末には過去最多の約21万人にのぼっている。

 厚生労働省のまとめでは、技能実習生を受け入れている事業所のうち、昨年に違法な時間外労働などの法令違反があったのは、3695カ所。一昨年より718カ所増え、過去最多になった。また、国際研修協力機構(JITCO)のまとめでは14年度の労災事故の死傷者は1241人で、こちらも過去最多に。作業中の事故で5人が死亡したほか、自殺が6人、脳や心臓の疾患による死亡者も6人いた。

 こうした状況を受け、労基署は技能実習生が働く事業所を重点的に監督指導している。今回の過労死認定について、技能実習生の支援に取り組む指宿昭一弁護士は「海外にいる遺族には情報がなく、労基署が申請を働きかけたことは高く評価できる」と話す。

 厚労省と法務省は昨年、技能実習生の保護を強化する法案を国会に提出。実習計画をチェックする組織を新設することなどを盛り込み、今国会も審議が続く。

 指宿弁護士は「長時間労働が横行しており、他にも過労死した人がいる可能性がある。組織をつくって管理を強めることはいいが、その実効性を確認する前に受け入れを拡大するべきではない」と話す。(小林孝也)

 

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