スマホアプリで残業記録 弁護士が開発、裁判の証拠にも

朝日DIGITAL 2017年9月2日
残レコの使用画面。スマホのGPSを利用し、職場にいた時間を記録する(南谷弁護士らの日本リーガルネットワーク提供)画像省略
 スマートフォンの位置情報を利用し、残業の証拠を残すアプリを弁護士らが開発した。実際にアプリを使って残業代を請求し、企業から示談金を勝ち取った事例も出た。開発した弁護士は「ITと法的サービスを組み合わせ、社会の課題解決につなげたい」と話す。
 アプリは「残業証拠レコーダー(通称・残レコ)」。南谷泰史弁護士(第二東京弁護士会)らが2015年に設立した株式会社「日本リーガルネットワーク」(東京都千代田区)が開発した。今年から本格運用を始めた。
 残レコは、スマホ内蔵のGPS(全地球測位システム)を利用し、職場にいた時間を記録する仕組み。残業代を請求する裁判で証拠として認められることの多い、職場の入退館記録に近い形だ。
 同様のアプリは複数あるが、残レコの記録はスマホではなく、同社のサーバーに保管されるため、利用者が記録を書き換えることはできない。南谷弁護士は「実際の裁判などで証拠として使えるよう意識した」と説明する。同社に依頼すれば、証拠として使える労働時間の「証明書」が発行される。
 残レコで、未払いだった残業代を取り返した人も現れた。
 代理人を務めた中野公義弁護士によると、九州のサービス業の会社に勤めていた男性は、会社から実際より短い勤務時間を申請するよう圧力を受け、昨年5月から残レコで記録を始めた。退職後の今年4月、記録を元に残業代を支払うように交渉を開始。6月上旬に示談が成立し、100万円超が支払われた。
 中野弁護士は「これまでは残業代を請求したくても、証拠となるタイムカードや入退館記録は会社側にあることが多く、どう入手するかがハードルだった」と話す。「残レコがあれば、一定の信頼性がある記録を持った状態で会社側と交渉に臨める点で大きい」
 アプリの利用は無料。証明書の発行には5万4千円の料金がかかるが、アプリに登録された全国約50人(6月現在)の弁護士に依頼すれば、発行は無料になる。(千葉雄高)

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