内定者と保護者と役員で食事会 人材逃さぬ企業側の工夫

朝日DIGITAL 2018年5月4日

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写真・図版:食事を前に内定者の家族の前で話をする桜井宏・JAぎふ組合長(省略)
 親向けに会社説明会を開いたり、親が入社式に同伴したりと、就職活動への親の関わりが話題になって久しい。そんな中、今度は「内定者の保護者」に注目する企業が出ている。売り手市場で人材確保が厳しさを増す中で、家族ぐるみで仕事への理解を深めてもらい、長く働いてもらいたいとの思いがある。
 2月上旬、岐阜市の老舗旅館「十八楼」。厳かな雰囲気の広間に、JAぎふへの就職を控えた内定者の家族約50人が集まった。若手職員がJAについて説明し、各職場を職員自らが紹介する手作りのVTRが上映された。
 その後は役員を交えた食事会に。桜井宏組合長もテーブルに加わり、「ご家庭で農協改革は話題になっていますか」と内定者の家族に話しかけた。
 JAの担当者によると、内定者の家族向けの説明会は昨年スタートした。桜井組合長は「今は少子化の時代。親御さんも、お子さんがどんな職場で働くのか心配されていると思う。少しでも不安を取り除くことができれば」と話す。
 長女が就職するという各務原市の男性(47)は「親も不安だったので、こうした場を作ってくれてありがたい。どんな仕事をするのか理解できたので、アドバイスできる場面もあると思う」と話した。
 愛知や岐阜でジュエリー・リサイクルショップを展開しているティアラ(本社・愛知県)も、3年前から内定者の保護者を招いて店舗見学のバスツアーや懇親会を開いている。その後の内定式では、強制ではないものの、ほとんどの内定者が親への感謝のメッセージを伝えるという。
 岩瀬智芳社長は「自分をさらけ出して、会社のすべてをお伝えしている。親御さんとも連絡し合える関係を築きたい」と話す。
 早期退職の防止も目的の一つだと言い、「この壁を乗り越えればすごく成長できるのに、そこで辞めてしまう若い人たちがいて残念に思っていた。会社の理念をご家族にも共有してもらえていれば、壁に当たった時に前向きな助言をしてもらえるはず」と期待している。(山野拓郎)

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