http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201511/CK2015112802000257.html
東京新聞 2015年11月28日
総務省が二十七日に公表した二〇一四年分の政治資金収 支報告書を見ると、国土強靱(きょうじん)化、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加など、安倍政権が進める施策に大きな影響を受ける企業や業界団体からは、政策に沿った政治資金の流れが目立つ。(福田真悟、小林由比)
大手ゼネコンなどでつくる「日本建設業連合会」(日建連)の会員企業四十二社が、自民党の政治資金団体「国民政治協会」(国政協)に計一億七千六百万八千円を献金した。自民党が政権復帰した一二年からおよそ三倍に膨らみ、国土強靱化政策などで潤う業界との蜜月ぶりが浮かぶ。
本紙の集計では、日建連の会員企業から国政協への献金は一二年、計六千百五万二千円。一三年は倍増した。同年は政権に復帰した自民党が国土強靱化法を成立させた。一四年は東京五輪関連の大型施設の受注も相次いだ。
清水、鹿島、大成建設、竹中工務店、大林組の大手五社は一四年に千六百万円ずつ献金した。鹿島は「自然災害などから国民の命を守る国土強靱化政策に期待して、判断した」とコメントした。
養豚業者らでつくる日本養豚振興政治連盟は昨年、国会議員の政治団体や政党支部に献金やパーティー券購入などで計千四十三万円提供した。TPP交渉で農業重要五項目の一つとして、関税の取り扱いが焦点となる中、一二年の設立以来最高額を支出した。
提供先は大部分が自民党議員で、農相経験者や、党の養豚議員懇話会、議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」のメンバーら約五十人に及ぶ。
連盟の事務局担当者は「養豚業の振興のためには法律も必要で、理解の深い議員との連携が不可欠」と説明。一四年の資金提供が、前年の三百九十二万円から大幅に増えたことについては「衆院選があったため、陣中見舞いがほとんどだ」としている。
TPP交渉は大筋合意したが、今後の国内対策について「次世代が養豚業を続けていけるような対策の中身となるように働き掛けを続ける」としている。
原発を保有する九つの電力会社の関連会社五社から、国政協に計千十四万七千円の献金があった。電力会社は一四年に、原発再稼働に向けた審査を相次いで申請していた。
献金したのは東北、関西、北陸、中国、四国電力の関連会社で、関電関連の「きんでん」が四百万円で最高額。新規制基準の審査に今年七月合格した伊方(いかた)原発を持つ四国電関連の「四電工」は、百九十一万五千円だった。電力各社は一九七〇年代に政財界癒着の批判を受け、企業献金を廃止したが、関連会社は続けてきた。きんでんは「関電からの指示はない。当社の自主的な判断で決定した」とコメントした。