「残業代ゼロ」論戦低調 自公触れず、野党反発 衆院選

 朝日DIGITAL 2017年10月17日

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衆院選の投開票まであと4日。働き手の命や健康にかかわる労働時間規制を巡る論戦が低調だ。規制の強化と緩和を抱き合わせた労働基準法改正案は、今秋の臨時国会で最大の与野党対決法案になるとみられていたが、突然の衆院解散や民進党の分裂劇が響いてほとんど争点になっていない。

「残業代ゼロ法案を、解散していなかったら(安倍政権は)秋の国会で通そうとしていたんですよ。私たちはまっとうなルールをしっかりつくっていきたい」

立憲民主党の枝野幸男代表は15日、大阪府高槻市での街頭演説で、雨が降る中集まった聴衆に訴えた。

専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を、残業時間の上限規制と一本化した労基法改正案を含む「働き方改革関連法案」は先月、厚生労働省の審議会で概要が示され、臨時国会への提出を待つばかりとなっていた。しかし、安倍政権は法案を閣議決定もせずに臨時国会を冒頭解散。論戦は先送りされた。

自民・公明両党は衆院選の公約で長時間労働の是正を掲げながら、「高プロ」の導入には触れていない。規制強化を訴える一方で、規制緩和に触れないのは「争点隠し」ともみられかねない。こうした動きに一部野党は反発を強めている。

枝野氏は16日、横浜市で記者団に対し、労働法制は「公平・公正なルールがないといけないということを分かりやすく伝えられるテーマだ」と語り、演説で意識的に取り上げていることを明かした。共産・社民両党も高プロを「残業代ゼロ法案」だと批判し、導入に強く反対しているが、希望の党、日本維新の会は導入の是非について公約で触れていない。

報道各社の情勢調査は、自民党が圧勝する勢いと伝えている。情勢通りになれば、与党は選挙後に高プロを含む労基法改正案の成立を目指す公算が大きい。

連合は今夏、執行部が高プロの条件付き容認に転じたことで組織が混乱。反対に立場を戻した経緯がある。連合は民進党と連携して政府の姿勢を厳しくただす戦略を描いていたが、支持してきた民進党が分裂、シナリオは大きく狂った。特定の政党と政策協定を結ばない異例の状況で選挙戦に突入する中、主要産別の幹部は枝野氏の姿勢を評価している。「自分たちの存在意義が分かっているんだろう。民進の政策をそのままのみこんだ形の主張で、我々としてはありがたい」(土屋亮、南彰)

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