インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」の労働者は孤独で無力だと感じている (12/1)

インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」の労働者は孤独で無力だと感じている
https://gigazine.net/news/20191201-gig-economy-workers-lonely-powerless/
2019年12月01日 19時00分 Gigazine

by bruce mars

インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済のことを指す「ギグ・エコノミー」という言葉は、近年になって広く使われるようになりました。一見すると特定の上司や職場にとらわれず、自由な生き方が可能になりそうなギグ・エコノミーですが、「実際にギグ・エコノミーに従事する労働者たちは孤独感や無力感を覚えている」と、カナダの研究チームは報告しています。

Workers in the gig economy feel lonely and powerless
https://theconversation.com/workers-in-the-gig-economy-feel-lonely-and-powerless-127188

カナダにおいてギグ・エコノミーは急速に生活の中心となりつつあり、配車サービスのUberや料理配達サービスのSkip the Dishesなど、多くの産業が単発の仕事を遂行する労働者を雇っています。雪の多いカナダでは、雪かきをしてくれる人をオンラインで雇うサービスも登場しているとのこと。

ギグ・エコノミーの労働者は柔軟な労働が可能であり、一つの固定された職場で働く人々よりも自由に生きられると考えられがちです。ところが、マックマスター大学のPaul Glavin氏、カルガリー大学のAlex Bierman氏、トロント大学のScott Schieman氏らの社会学者からなる研究チームは、ギグ・エコノミーの労働者たちは分権化されており、職場の人々との交流や継続的な雇用が欠如した不安定な存在だと考えています。ギグ・エコノミーの労働者に関する利用可能なデータが不足しているため、市場ではギグ・エコノミーについて過大評価が行われている可能性があると研究チームは指摘。

by Franklin Heijnen

そこで研究チームは2019年、ギグ・エコノミーおよび通常の雇用体系で働いた労働者らに対するアンケート調査を実施し、実際にギグ・エコノミーで働く人々がどう感じているのかを調べました。

研究では合計で2524人のカナダ人労働者にオンラインでアンケートを実施し、「過去1カ月で食事のデリバリーやライドシェア、オンラインのタスクなどのギグ・エコノミーに従事したかどうか」を尋ね、この設問に当てはまった人をギグ・エコノミーの労働者と定義しました。調査の結果、回答者のうち5人に1人がギグ・エコノミーの労働者であることが判明し、非常に多くの人々がギグ・エコノミーに従事していることが明らかとなりました。

調査の結果、ギグ・エコノミーの労働者は「人との交わりの欠如」「周囲から取り残されているという感覚」「孤立感」などを報告する可能性が、通常の労働者に比べて2倍も高いことが判明。また、メンタルヘルスの測定では不安やうつ病の兆候を示すスコアも、ギグ・エコノミーの労働者の方が高かったそうです。

さらに、ギグ・エコノミーの労働者は一般的な労働者と比較して、「自分が無力な存在である」と感じる可能性が50%高く、「自分の人生をコントロールできていない」と感じる可能性も40%高かったとのこと。つまり、「ギグ・エコノミーの労働者は職場のしがらみから解き放たれた自由な存在である」という一般的な見方は、ギグ・エコノミーの労働者の実態を反映していないといえます。

by Andrew Neel

研究チームによれば、ギグ・エコノミーの労働者は若くて未婚であり、より長時間働いており、高等教育を受けている割合が低かったとのこと。しかし、これらの要因を考慮した上でも、ギグ・エコノミーの労働者の抱く孤独感や無力感は、やはり一般的な労働者よりも高かったそうです。

また、「特定の上司に縛られるおそれがない」というギグ・エコノミーのメリットも、結局のところ上司がアルゴリズムに変わっただけであり、需要の変動や顧客の評価などによって仕事を失う危険性があると研究チームは指摘しています。

近年ではギグ・エコノミーの導入が各所で始まっていますが、労働者にかかる心理的な負担なども考慮して、実際にギグ・エコノミーを導入するべきかどうか考える必要があると研究チームは述べました。

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