毎日社説:政労使会議 雇用全般を語る場に

毎日新聞 2013年09月21日 02時30分

 政府と経済界、労働者の代表が賃上げなど雇用をめぐる問題を話し合う政労使会議の初会合が開かれた。デフレ脱却に向け企業の賃上げが欠かせないとして、安倍政権が経団連や連合に働きかけて開かれた。

 賃金の水準は労使の話し合いで決めるのが基本だ。賃上げという働く者が待望している案件であっても、政府が過度に介入するのは禁じ手と言える。ただ、非正規社員の増加など労使だけで解決できない問題は広がっている。政府はむしろ聞き役に回り、目先の賃金にとどまらず、非正規問題、若者の雇用、女性の活用、中小・零細企業で働く者の格差是正といった雇用全般の将来を話し合う場にしてほしい。

 安倍晋三首相は今春も、経済3団体に賃上げへの協力を要請した。円安、株高を受けて業績好調な企業はボーナスを上積みしたが、首相発言に呼応して春闘で賃金体系を底上げする企業はごく一部にとどまった。

 アベノミクスで消費者物価を年2%引き上げる目標を掲げ、輸入品を中心に物価はじわじわ上がってきた。来年4月の消費税の引き上げも予定されている。給料がそのままなら国民の暮らしは確実に苦しくなる。消費意欲が衰えれば、アベノミクスは行き詰まってしまう。このため、安倍政権は賃上げした企業への減税の拡充など下支え策を検討してきた。さらに、企業収益の改善が着実に賃金や雇用の拡大に結びつくよう、来年の春闘の準備段階であるこの時期に協議の場を設けた。

 経団連は「賃金交渉は企業の支払い能力に応じて行うべきだ」との姿勢で、政府の関与には冷ややかだ。ただ、経営環境が全体として好転しているのも事実だ。経営者からも「業績が上がる見通しがつく企業は賃上げを考えていくことが重要だ」と前向きな発言も出てきた。

 企業規模や業種によって状況はさまざまだが、収益が急速に拡大している業種もある。長く抑えられてきた賃金の改善について、経営者が強く意識することが必要だ。

 労働組合側は賃上げの流れに異論はないだろう。ただ、労使だけで手がつけられない雇用問題にも目を向けることが必要だ。連合は春闘で非正規の正社員化や昇給制度の明確化、社会保険適用拡大などを要求項目に掲げた。こうした課題は政府も交えたルール作りが必要になる。この政労使会議で、雇用をめぐる幅広い課題の取り組みを深めてほしい。

 政府は、短期的な賃金改善を求めるだけでなく、企業が賃上げできる環境作りをさらに進めることが大切だ。大手と中小企業の賃金格差は広がっている。中小・零細企業で働く者への目配りも課題だ。

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