派遣労働を恒常的・永続的な制度にする労働者派遣法の大改悪に反対する声明

規制改革会議答申は、2013年6月5日、「『常用代替防止』等を見直す」とし、派遣期間の在り方等を検討することを提起した。この答申を受けて、安倍内閣は、6月14日、派遣期間の在り方の見直し等を含む労働者派遣制度の見直しを閣議決定した。厚生労働省に設置された今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会は、8月20日、報告書を発表した。これらの答申、閣議決定、報告を受けて、現在、労働政策審議会は、労働者派遣法の改定案を年内に取りまとめ、政府は、来年の通常国会に労働者派遣法の改定案を提出する予定と伝えられている。

労働者派遣制度の在り方に関する研究会(在り方研)報告は、冒頭、「我が国の労働市場・経済活動において、労働者派遣制度は労働力の迅速・的確な需給調整という重要な役割を果たしている。こうした役割を評価し」と述べている。しかし、これは、低賃金・不安定雇用の労働者派遣の実態をみない、労働者の雇用と労働条件の保護に逆行する評価である。

在り方研報告は、「常用雇用代替防止は、派遣先の常用労働者を保護する考え方であり、派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない面がある。」として、「無期雇用派遣については、今後の常用代替防止の対象から外す」、「有期雇用派遣については、これまでと同様、常用代替防止の対象として一定の制約を設けることが適当」としている。しかし、常用代替防止とは、「派遣労働者を常用労働者の代わりに使用してはならない」という原則であり、1〜3年の期間制限を超えて派遣労働者を使用する場合には、派遣先は派遣労働者を正社員にする義務があるという原則であり、今後とも守られるべき原則である。

在り方研報告は、無期雇用派遣については派遣期間制限を一切なくし、有期雇用派遣については3年の派遣期間制限を設けるとしている。しかし、有期雇用派遣の場合でも、派遣先は、派遣労働者を代えれば永続的に労働者派遣を使用することができる。この場合、在り方研報告は、3年の派遣期間制限を超える場合、派遣を継続するか否かについて派遣先の労使がチェックする制度を設けるとしている。しかし、今でも、派遣期間制限違反、偽装請負等の違法派遣が労使のチェックを受けずに横行している実態からして、上記の派遣先のチェックが実効性を持つことは期待できない。

さらに、在り方研報告は、「派遣元は、同一の有期雇用派遣労働者が派遣受入期間の上限に達する場合は、?派遣先への直接雇用の申入れ、?新たな派遣就業先の提供、?派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じなければならないこととする。」としている。しかし、従来、派遣先の直接雇用がまったく実行されず、新たな派遣就業先の提供も実行されないことが多い実態からして、これらの雇用安定措置の実効性もまた期待できない。

安倍政権が押し進める労働者派遣法の改悪のもとでは、一方で、低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が蔓延し、他方で、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を閉ざされてしまうことになる。これでは、直接雇用の原則はますますないがしろにされてしまう。

私たちは、安倍政権が押し進める労働者派遣法の大改悪に反対し、製造業派遣・登録型派遣の全面禁止、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求するものである。

   2013年9月25日
               自由法曹団団長 篠原 義仁

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