南日本新聞】 2013.12.29
[ブラック企業] 根絶へ向け対策を急げ
厚生労働省は、過酷な働き方を強要する「ブラック企業」の疑いがある全国の企業・事業所5111社の監督結果を発表した。全体の82%、4189社で法令違反が明らかになり、是正勧告した。鹿児島県内でも57社あった。
若者らを使い捨てにする企業がまん延している実態が浮き彫りになった。事態は深刻である。国は根絶へ向け、早急に対策を強化する必要がある。
厚労省は9月、電話相談で寄せられた情報や離職率の高さなどをもとに対象企業を選定した。監督結果によると、違法な時間外労働が43.8%、残業代不払いは23.9%だった。
公表された違反事例はすさまじい。長時間労働で精神障害を発症した後も月に80時間を超えて残業させる。社員の7割を管理職として扱い、割増賃金を支払わない。賃金を1年間も滞らせる、パート従業員に月170時間の残業を強いる−などである。
ブラック企業は正社員を多数採用して選別し、不要と判断した社員は酷使して退職に追い込むのが特徴とされる。非正規雇用が増える中、正社員として雇ったことを逆手にとる悪質さである。
被害が特に目立ったのは2008年のリーマン・ショック後という。専門家は雇用環境の悪化で社内で人材を育てる余裕がなくなり、パワハラ、セクハラ、執拗(しつよう)ないじめが横行したと指摘する。
だが、今回明らかになった被害も氷山の一角と見るべきだろう。連合総研が10月に実施したアンケートでは、20〜30歳代2割が自分の勤務先が「ブラック企業」に当たると答えている。
国は是正に応じない場合は労働基準法違反などで送検し、社名を公表するとしている。違反は決して見逃さないという厳格な姿勢が求められる。
厚労省は、15年春卒業予定の大学生らの雇用を希望する企業に対し、過去3年間の採用者数と離職者数を求人票に明示するよう求める。判断材料となる情報開示は積極的に進めるべきだ。
電話相談ダイヤルの設置や労働法の知識を紹介するホームページ作成などの経費も来年度予算案に盛り込んだ。実態把握と被害防止につなげたい。
労働組合や労働相談を受けるNPO、弁護士団体などとの連携も強める必要がある。労組のない中小企業や、非正規労働者への対応など残る課題についても、知恵を絞って対応してもらいたい。
若者が就職に希望を持てない国に未来はない。社会全体でその意識を共有し対策に生かすべきだ。