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高知新聞 2015年09月02日
未成年の高校生が、大人から労働搾取をされるとは嘆かわしい。
アルバイト先で過酷な仕事を強いられたり、不当な扱いを受けたりする、いわゆる「ブラックバイト」に悩む高校生が労働組合「首都圏高校生ユニオン」を結成した。高校生だけの労組は全国で初めてという。
「進路のためアルバイトを辞めたいのに辞めさせてもらえない」「賃金計算が15分単位の切り捨て」「コンビニでおでん販売のノルマを課せられ、300個を自分で購入した」―。
関係者によると、高校生からはそんなSOSが相次いでいるという。
ブラックバイトは、社員に長時間労働などを課す「ブラック企業」とともに大きな社会問題になっている。昨年から大学生による労組の結成が相次いでいたが、高校生の結成は事態の深刻さを物語っているといえよう。
背景を探っていくと、現代社会が抱える問題が浮き彫りになる。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、1993年に1世帯当たり657万5千円あった年間平均所得は、2013年には528万9千円と2割近くも減少している。
親の経済事情が年々厳しくなり、アルバイトで学費や生活費を稼がざるを得ない学生の増加が見て取れる。このため、ブラックバイトでも簡単に辞められず、問題も表面化しにくいと、専門家は指摘する。
労組を立ち上げた高校生も、家の生活費を助けるために働いたり、昼間はアルバイトをして夜に定時制高校に通ったりしている。高校生は大学生以上に法律知識に乏しく、交渉力もないため、犠牲になりやすい。
こうした純真な若者を、事業者が己の利益のために不当に働かすことは許されない。事業者側の早急な是正を求めたい。
ブラックバイトが深刻化する一因には近年の労働市場の変化もあろう。
正規雇用が減り、非正規労働者が増えたことで、管理業務やノルマ達成なども非正規が担うようになった。これが低賃金で正規並みの労働を課す「ブラック」を加速させている。
若い世代に理不尽な労働を強いることは、勤労の意欲をそぎ、将来の社会の活力低下にもつながりかねない。国も近く実態調査に入るというが、コンビニや飲食店などの業界団体も対応を急ぐべきだろう。