第47回 1月の完全失業率が低下したのはなぜか

総務省が2月27日に発表した1月の「労働力調査」(「労調」)によると、1月の完全失業率(季節調整値)は4.1%で、前月に比べ0.2ポイント改善しました。雇用情勢の前例のない悪化を受けて大きく上昇するものと予想されていただけに、意外な感じがします。これはいったいなぜなのでしょうか。

「労調」における「完全失業者」は、求職活動をしていながら、調査期間中(月末に終わる1週間、ただし12月は25日に終わる1週間)に仕事をまったくしなかった人です。一時間でも仕事をした人は、就業者と見なされ、失業者には含まれません。また、適当な仕事がないために求職活動をあきらめている就業希望者は、非労働力人口とみなされ、失業者に含まれません。今回の「労調」で昨年12月より1月の完全失業率が下がったのは、この大不況のなかで一方では短時間就業者が増え、他方では求職活動をあきらめた人が増えて結果です。

注意を要することに、非正規労働者、とりわけパートタイム労働者や派遣労働者の増大は、完全失業率を下げる効果があります。とくにこの数年急増した登録型の派遣労働者のなかには、低所得で預金もない人が多いうえに、失業時の生活を支える雇用保険から排除されている人も少なくありません。これらの人々は、求職活動に時間をかけることが困難なために、たとえ日雇いの細切れ仕事でも、就業の機会がありさえすれば選択の余地なく働かざるをえません。そういう就業行動をとる求職者が増えれば、統計上の完全失業率は下がることはあっても、それによって失業問題が真に改善されることはありません。

ついでに言えば、資本主義の労働力需給調節メカニズムにおいては、狭義の失業者だけでなく、半失業状態や潜在失業状態にある者も、マルクスのいう「産業予備軍」として、現役労働者の労働条件や雇用を脅かしています。「労調」の区分で言えば、産業予備軍は、?完全失業者に加えて、?パート・アルバイト・派遣・契約社員・嘱託などの非正規労働者と、?「適当な仕事がありそうでない」などの理由で求職活動をしていない就業希望者――両者の全部でないまでもかなりの部分――を含むものと考えるべきである。ちなみに、「労調」の2008年平均結果によれば、これらの合計は2479万人(?265万人+?1760万人+?454万人)になります。

この記事を書いた人