第114回 ブラック企業の見分け方、教えます

11月17日、エルおおさか(大阪府立労働センター)において、大阪過労死問題連絡会の主催で、「就活におけるブラック企業の見分け方」というシンポジウムがありました。そこでは、日本海庄や(大庄グループ)の新卒過労死事件に関する松丸正弁護士の事例報告と、新卒者の就職活動と働き方に関する私の基調報告のあと、上場企業で過労死した新卒労働者の父親の話や、団体交渉に関する地域労組おおさか青年部、中嶌さんの話や、若者の離職理由の調査結果に関するNPO法人POSSE事務局長、川村さんの話や、100社以上にエントリーし、数十社で面接まで行った女子学生の就活体験の話がありました。

それらの話は、いずれも新卒者と若者をとりまく労働市場の厳しさと、ブラック企業の見分け方を知る上で、きわめて有益でした。ここではメインテーマであった「ブラック企業の見分け方」について、当日語られたことを私なりに整理してお伝えします。

<広義のブラック企業>
◇過労死・過労自殺を起こしたことがあるか、起こす恐れがある。
◇残業時間が異常に長く、サービス残業(賃金不払残業)が恒常化している。
◇36協定に月80時間以上の残業を認める特別協定を盛り込んでいる。

この意味でのブラック企業には、少なくない大手一流企業も含まれます。しかし、その多くは、世間ではそうとは思われていないか、ほとんど知られていません。その意味では「隠れブラック」と言ってもよいでしょう。

<狭義のブラック企業>
◇社員規模に対する求人数の割合が不自然に高く、離職率が目立って高い。
◇社員の平均勤続年数がかなり短く、平均年齢がかなり若い(離職率が高い恐れ)
◇基本給+残業代を初任給とし、長時間残業を給与体系に組み込んでいる。
◇「〇年後には独立可能」「入社即店長」「〇年後には年収〇百万円」などの「夢」をや
      たらと売り物にする。
◇求人情報の労働条件と採用後の労働条件が大きく異なる。
◇株価がきわだって高く、「猛烈企業」として名が通っている。
◇社長がワンマンないしカリスマでやたらと従業員のやる気を鼓吹する。
(この項は「注目のニュース」欄の11月19日朝日記事を参照)

最近になってこれらの企業が「ブラック企業」として問題になってきた背景には、企業の利益第一主義の経営と政府の新自由主義的雇用政策が強まり、底辺に向かっての競争(race to the bottom)が激化してきたなかで、労働条件の悪化が一段と進んだという事情があります。そのうえ、就職新氷河期に入り、学生たちが従来なら敬遠したかもしれない問題企業にも応募し、就職せざるをえなくなったことが、ブラック企業への関心を高めたと言えます。さらにいえば、インターネットの掲示板や労働サイトに個別企業の告発情報や内部情報が溢れるようになったことも無関係ではありません。

総じて多くの企業の労働条件が悪化してきた今日では、ブラック企業を見分けて避けたつもりでも、自分の入った会社が不幸にしてブラック企業である可能性があります。とすれば、たんに見分け方を身につけるだけでなく、そうした企業に対する対抗手段や問題解決の方法を知っておく必要があります。

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