第95回 外食産業における超長時間労働の構造

去る6月15日、大阪過労死問題連絡会の主催で「若年労働者を使い捨てにする外食産業の過労死・サービス残業を考える」というシンポジウムがありました。大阪弁護士会館で開かれたこのシンポでは、大庄・日本海庄や新卒過労死事件の遺族をはじめ、宅配ピザ店やファミリーレストランの従業員の家族や弁護士が、外食産業の過酷な労働実態について報告しました。

私はそこで基調講演をするために外食産業の超長時間労の実態について調べてみて、驚きました。総務省の2007年「就業構造基本調査」によって外食産業を含む男性正社員の飲食物調理従業者の労働時間を見ると、全体の8割(81%)は年間250日以上就業し、その半数(53%)が週60時間以上、また3人に1人(35%)が週65時間以上働いています。また、年間300日以上就業する人が3割(29%)に達し、その7割(71%)は週60時間以上、半数以上(55%)は65時間以上働いています。

シンポで報告された事例を参考にいえば、外食企業の労働時間がこれほど長い背景には、次のような構造があると考えられます。

1)長時間営業と超長時間労働
ファミレスのなかには年中無休の24時間営業のところもあります。そうでなくてもAM9:00〜PM23:00はざらです。月平均89時間の残業で過労死した吹上元康さん(当時24)が働いていた日本海庄や石山駅店の場合は、「年中無休 11:30〜14:00 17:00〜23:00」でした。この営業時間でも、正社員は2時〜5時の時間帯にも仕事があり、開店前や閉店後も準備や片付けで、1日12時間以上働かされます。外食ブラック企業に関するブログ情報には「24時間営業とかだと月間労働時間400時間オーバーの店長とかいます」という書き込みもあります。

2)高い非正規労働者比率 
飲食産業は非正規労働者比率が際立って高く、総務省「労働力調査詳細集計」2009年平均結果によると、7割近く(68%)が非正規です。外食産業だけのデータは見当たりませんが、外食の非正規比率はこれよりはるかに高いと考えられます。マクドナルドでは店舗投入労働時間の9割以上をパート・アルバイトが占めていると言われています。こういうパート・アルバイト多用産業では、正社員の労働時間はいきおい超長時間化・年中無休化し、休みはよくてせいぜい週1日しかないということになっています。

3) 超長時間残業を強制する給与体系
2、3年前に、外食産業では、店長は本来の管理監督者には当たらないのに、管理職であるという名目で残業代を払わず長時間のただ働きをさせていることが大きな問題になりました。この「名ばかり管理職」問題は、その後、労基署の指導によって表向きはある程度是正されてきましたが、その一方で、一定の残業時間や販売ノルマなどを超えないと受け取れない給与を「基本給」であるかのように装って採用し、殺人的超長時間労働を強制するあこぎな企業が増えています。

この記事を書いた人