第108回 新卒労働市場に翻弄される学生たち

就活というキーワードでネット検索をしていると、大学生の保護者の就活への関心が高いためか、保護者のための就職情報のコラムや、保護者が書いた息子・娘の就活ブログ日記がいくつか目にとまりました。

その一つに「日経就職ナビ保護者版」があります。その大見出しは「親子で就職活動」となっています。学生の就職環境があまりに悪化したために、いまは親も就活に関与する時代になったのでしょうか。なかでも興味を惹かれたのは、「就活の今と昔」のページにあった後掲の対照表です。

この表をみると、学生の親たちである50歳前後の世代は、会社訪問は4年生の10月1日、選考試験は11月1日に解禁になっていました。実際の面接はそれより早く7月頃にあったとしても、3年生の秋から就活が始まるいまとは大違いです。インターンシップも就活の一部とすれば、就活は3年生の夏から始まっているといえます。それどころか、大学が行うキャリアデザインやキャリアプランに関する各種セミナーを含めると、学生の就活は1年生からスタートしていることになります。

大学卒業予定者の就職・採用に関しては、かっては、大学と経済界の間に(ある時期には文部省や労働省も入って)、推薦や面接や選考や内定の開始時期に関する「就職協定」がありました。就職協定にはいろんな変遷がありましたが、日本経営者団体連盟(日経連)に押し切られて1996年に廃止されて、協定のないままいまに至っています。

就職協定は紳士協定で強制力がなかったために、協定破りの青田買いが後を絶ちませんでした。それでも、何の拘束もない現状と比べると、就職協定があった時代は、企業が大学の教育をいまほど台無しにし、学生が新卒労働市場にいまほど翻弄されることはなかったように思います。(この項は次回につづきます)

就活の今と昔(「日経就職ナビ保護者版」から)

           保護者世代           お子様たち

年齢          50歳前後             大学3年生・大学院1年生

年間労働時間   2100時間             1800時間

働き方        終身雇用・年功序列から    終身雇用崩壊、成果・実力主義
                    終身雇用崩壊、成果・実    非正規社員の増加 
                   力主義へ 、

採用に対する      1985年男女雇用機会均     男女差別禁止
企業の態度       等法改正により総合職で
                    の女子学生採用が増え

                    始める

新卒採用数       拡大(売り手市場)          縮小(厳選採用で買い手市場)

選考方法        履歴書、面接中心。一部     エントリーシート、筆記試験
                  で筆記試験(一般常識・      (SPI2、Webテスト、テストセ
時事問題) 、             ンター方式)、面接(個人、集
団、グループディスカッション)

就職活動    4年生の10月1日会社訪問       3年生の10月(インターンシップ
開始時期   解禁、11月1日選考試験解        参加者は6月から)
禁(実際には7月頃に面接) 

内定時期    4年生の11月以降(早い人      4年生の4月下旬(一部業界では                                      は8月にも)                             3年生の12月)

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