第127回  『就活とブラック企業』(岩波ブックレットNo.805)が出ました

この3月の卒業予定の大学生の就職内定率が過去最悪になるのは必至な状況です。3月18日に発表された厚労省と文科省の合同調査によれば、2月1日現在の大学生の就職内定率は前年から2.6ポイント低下し、77.4%にとどまっています。この数字は1996年の調査開始以来では過去最悪で、80%を切ったのも初めてです。各紙が報じているように、就職希望者のうち、卒業が目前に迫っても就職先が決まらない大学生が推計で約9万人もいることになります。

これらの学生は、昨年の秋、早い人は夏以来、1年以上にわたって就活を続けても就職が決まっていないのです。他方、内定をとった学生たちも、悪化する雇用情勢のもとで、労働条件の非常に劣悪な企業で働かざるを得ない場合が多く、労働基準法もお構いなしの「ブラック企業」が議論を呼んでいます。

こうした問題を取り上げて開催された大阪過労死問題連絡会のシンポジウムをもとに、緊急出版されたのが、表題の『就活とブラック企業』です。

第?部「就活とブラック企業を考える」では、森岡が「大学生の就職活動と就職後の働きかた」について概説し、松丸正弁護士が「日本海庄や過労死事件」から見たブラック企業の、基本給12万3000円、残業代7万1000円という恐るべき働かせ方を語っています。その企業で息子さんを就職4カ月で失った父親の話もあります。

第?部「学生の就活体験と若者の労働実態」では、1年半就活を続け、160社の説明会などに出て、30社以上で面接を受けた関西大学4回生の畑中文(仮名)さんの「私のシューカツ体験」、若者の労働相談活動を行うNPO法人、Posse事務局長、川村遼平さんの「なぜ若者は会社を去るのか――ハローワーク前調査から」、地域労組おおさか青年部書記長の中嶌聡さんの、「「正しくキレる」手段としてのユニオン」という、3つの報告が今の就活の過酷さと就職後の労働実態の厳しさを教えてくれます。

最後の「質疑応答」は、ブラック企業から身を守る簡単な法律相談になっていて役に立ちます。

「あとがき」に書きましたが、就職難に喘(あえ)ぐ学生たちや、仕事に疲れた若者たちは、社会に向かってSOSを発しています。と同時に、ともに悩みを聞き、希望を語り、現状を打開する取り組みも始まっています。このブックレットは、学生と若者の悲鳴と怒りを社会に伝え、まともな働き方について考えるために作られました。学生と若者はもとより、教師や親のあいだでも、これを一つの材料に、問題解決に向けての議論が広がることを期待しています。

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