昨日、過労死防止基本法の制定を求める要請活動に参加し、衆議院第1議院会館と参議院会館のあいだを往来しました。
途中の衆議院第2議院会館の前では、「頑張れ日本!全国行動委員会」の呼びかけた「自民党総裁は本格保守政治家を! 民主党の尖閣国有化糾弾! 緊急国民行動」に三桁に上る人々が手に手に日の丸を掲げて集まっていました。「本格保守政治家を」というのは、どうやら、この会に前から名を連ね、会の集会でも演説もしている安倍晋三元首相を自民党総裁に押し出すキャンペーンのようです。
帰阪してニュース検索をしていると、共同通信配信の「石川県中能登町、日の丸購入者に商品券」という記事が目に留まりました。この制度は、町議会で議決され、祝日に国旗掲揚を推進する目的で、国旗購入時の領収書などを提出した町民に、町内で使える1000円分の商品券を交付するとか。町の世帯数の半数弱に当たる3000世帯分の300万円を予算案に盛り込んだそうです。記事には、町は「日章旗掲揚推進懇話会(仮称)」を組織し制度の周知を図るということも出ています。さしあたり世帯の半数近くが購入すると見込み、掲揚を推進し、掲揚しない世帯を見張るとでもいうのでしょうか。
大阪府では昨年6月、日の丸掲揚と、式典などで君が代を歌う際に公立学校教職員の起立・斉唱を義務付ける条例が成立しました。大阪市でも同様の条例が今年2月に成立しています。大阪府市の条例では強制は公立学校の教員にとどまっていますが、石川県中能登町の場合は、条例による強制ではないものの、一般世帯に祝日の日の丸掲揚を求めるというのですから、とうとうここまできたかという感じがします。
この流れが広がれば、日の丸の掲揚は、公共施設での祝日・式典掲揚から常時掲揚へ、さらに公共施設掲揚から一般家庭掲揚へと拡大していく恐れがあります。新聞はいまのところ祝日に題字横に日の丸を掲示しているのは産経新聞だけですが、他紙も読者や世論の圧力が高まれば、どうなるかわかりません。
川柳作家の岸本水府に「旗立てることが日本に多くなり」という秀句があります。彼がこれを詠んだのは、日本が自作自演で「満州事変」(1931、昭和6年)から「上海事変」(1932、昭和7年)へと突っ走るようになったころのことです。
日の丸掲揚が戦争と結びついていたのは戦前のことであっていまの日本は違う、とはいえません。今後、尖閣列島と竹島の緊張がさらに高まれば、日の丸の広がりが軍拡を後押しし、再び無謀な戦争に結びつかないともかぎりません。
11年前の9.11、私はツインタワーがテロアタックを受けたニューヨーク市にいました。その日から、アメリカでは報復が叫ばれ、愛国が鼓舞され、街には一斉に大小無数の星条旗が立つようになりました。そして、アメリカは、その日から戦争体制に突入し、アフガニスタン、そしてイラクへと侵攻していったのです。いまではそれは取り返しのつかない誤りであったことが明らかになっています。
日本にもどれば、戦後の平和憲法のもとで培われた常識がつぎつぎと否定され、改憲・軍拡の橋下維新が猛威をふるうようになったいま、私たちは一般世帯の日の丸掲揚奨励を一地方のこととして無視せず、それが戦前戦中のような息苦しい社会への一里塚であることを世論に働きかけていかなければなりません。