第199回 大阪南港野鳥園の廃止を許してはなりません

今日の朝日夕刊の一面トップに「野鳥の楽園 改革の波」という記事が出ています。年間10万人の来場者がいて、子どもたちにも貴重な自然教室として親しまれている大阪市立・大阪南港野鳥園が、橋下市政の予算カットで廃止に追い込まれようとしているというのです。これは許せません。

私自身も南港野鳥園のファンで、自分のHPの「気まぐれバーディング」のコーナーで、2003年9月28日、「大阪南港野鳥園、シギ・チドリ・ネットワークに登録」と題して、次のような拙文を書いています。

文中にミサゴという鷹が出てきます。ミサゴをフィッシュホーク(Fish Hawk)というのは通称で、正式にはオスプレイ(Osprey)といいます。2005年のちょうど今頃(10月9日)に淀川でもミサゴの魚のダイビングキャッチのシーンをこの目で見ました。その日の「気まぐれバーディング」に書いたように、ミサゴはトビと同じくらいの大きさで、海浜や大きな河にすみ、上空から垂直に急降下してボラやスズキやコイやフグなどを鋭い爪で捕らえ、悠然と運び去ります。いま沖縄で大きな怒りを呼んでいる垂直離着陸軍用機「オスプレイ」の名はこの鷹の垂直降下の飛び方からきています。沖縄のオスプレイがどんなに憎かろうと、南港野鳥園のオスプレイ(ミサゴ)の生息環境を奪ってはなりません。

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秋の渡りのシーズンです。北からヒシクイ、マガン、オオハクチョウなどの飛来のニュースが伝えられています。伊良湖岬からは南に帰るサシバの群れの便りが今年も届いています。そういうなかで、南への長旅の途中のシギの仲間たちに挨拶しなければと思い立ち、南港野鳥園に行ってきました。

昨夜、ネットで調べているうちに、今日は同園がシギ・チドリ・ネットワークに登録されたのを記念してセレモニーが現地で開かれることを知りました。それに興味があって行って見ると、開園20周年記念式典の一環であることが判りました。

かつて大阪湾のいたるところにあったはずの自然干潟は産業優先の開発によってとっくに消えてしまいました。南港野鳥園は「南港の野鳥を守る会」などの市民グループの運動に押されて大阪市が造った人口干潟です。もともとお粗末な環境行政と近年の財政難のために、ここは全国の他の水鳥センターに比べていかにも貧相です。それでもシギやチドリの仲間が移動の途中でよく立ち寄るところとして知られています。

「地球を旅するシギ・チドリ」によれば、この鳥たちはシベリアやアラスカなどで夏生まれ、日本・韓国・中国などの干潟でエネルギーを補給しながら南を目指し、オーストラリアやニュージーランドなどで冬を越すそうです。この季節に見かけるシギたちははるばる南の越冬地へ渡る途中で日本に立ち寄ったものと思われます(種類によっては日本で繁殖するものもいるようです)。前述の「シギ・チドリ・ネットワーク」は、正式には「東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」といいます。これも文字通りグローバルな渡りのルートゆえです。現在、ルート上の10か国、31湿地がこのネットワークに参加しているとウェブに出ています。

肝心の今日のバーディングですが、シギの仲間ではチュウシャクシギ、セイタカシギ、タシギ、アオアシシギ、コアオアシシギを識別することができました。チュウシャクはくちばしが頭の2倍もあって下に湾曲していることが特徴です。いたのは一羽で、熱心に水浴びをしていました。セイタカはとても長いピンクの足と白い胸、黒い背中の優美なシギです。これも一羽でしたが、宝塚のラインダンスのようにずらりと並んだところを見たいものです。

シギ類は識別がたいへん難しく、これまでの何度かお目にかかりながら、図鑑をもっておらず、これとはっきりさせられない種類もありました。そんなわけで、先に挙げた5種は明確には今回初めて識別したことになります。

予想外だったのは、ミサゴに出会ったことです。Fish Hawkといわれるように魚を常食とするこのタカは、2年前にニューヨークのジャマイカ湾の野生生物保護区で子育て中のつがいを見たことがあります(「ニューヨーク通信:水鳥を見るならジャマイカ湾の野生生物保護区」)。でも日本ではっきり確認したのはこれが初めてです。南港にはタカ類ではミサゴのほかに、ハヤブサ、オオタカ、チュウヒ、チョウゲンボウなどが来るようですが、ここではチョウゲンボウと今日のミサゴ以外はまだお目にかかっていません。

シギ・チドリ類では、このシーズンだけでも、アカアシシギ、イソシギ、エリマキシギ、オオソリハシシギ、オジロトウネン、オバシギ、キアシシギ、キョウジョシギ、コオバシギ、コチドリ、ソリハシシギ、トウネン、ヒバリシギ、ホウロクシギなどが立ち寄るようです。景観からも鳥の種類からもさほど面白くない(ここは「とても面白い」と言うべきでした—本日追記)野鳥園ですが、これからも春と秋の渡りの季節には足を運ぶ必要がありそうです。

 


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