番外出版広告 健康・安全で働き甲斐のある職場をつくる、ミネルヴァ書房、2016年3月

岸-金堂玲子・森岡孝二編著、ミネルヴァ書房、2016年3月刊行、321頁、3,400円+税

今日、働く人びとの労働と雇用が深刻な困難に直面し、健康と安全が大きく脅かされている。「健康・安全で働き甲斐のある職場をつくる」課題は、日本社会の発展や持続性、日本の将来のあり方にも直結する重要な課題である。日本学術会議では、医学、保健学に加えて労働法学や経済学、工学など多様な分野から専門家が参画し、労働に関連した健康・安全問題について、海外の動向を含めて広く検討し、2011年4月に「提言」としてまとめた。また、その内容は、2012年4月から14年3月にかけて24回にわたり月刊雑誌『公衆衛生』(医学書院)に連載された。

本書は、上記の提言と連載に関わったメンバーのほかに新たに書き手を得て、最近の社会状況の変化を踏まえ内容を拡充・刷新し、わかりやすく解説したものである。それだけに本書は、当事者である働く人、産業保健専門家、公衆衛生行政や労働行政に携わる方、高校・大学でキャリア教育に携わる方、経営者および労働者諸団体など、広範な人びとに役立つと同時に、現場での問題解決に有効で、かつ近未来の確かな羅針盤になるであろう。

[ここがポイント]
◎ 日本学術会議がまとめた提言を拡充しわかりやすく解説。
◎労働・雇用環境をめぐる最新の話題を提供。

<目次>
序章 労働雇用問題がなぜ現代日本で最重要課題なのか―過去100 年の歴史を遡り考える 岸-金堂玲子
第?部 今,雇用の場で何が起こっているか?――働く人の実態
第1章 現代日本の長時間過重労働の実態とその背景 森岡孝二
第2章 過重労働と過労死をいかに防止するか 森岡孝二
第3章 ブラック企業の雇用実態と労務管理戦略――労務管理と技能の階層差の視点から 今野晴貴
第4章 非正規雇用労働者の安全・健康・権利 矢野栄二
第5章 非正規雇用――労働法から見た問題点と今後の解決の方向性 和田 肇

第?部 職場の環境安全問題とリスク管理・マネジメント
第1章 日本の労働安全衛生統計・調査と予防活動 小木和孝
第2章 危険有害な労働環境の現状と今後の改善方策 久永直見
第3章 産業環境の変化と労働災害管理システム―建設プロジェクトにみる労働環境改善への取り組みについて 草柳俊二
第4章 放射線作業者の健康と健康リスク管理 武林 亨
第5章 公害から見た労働者災害―アスベスト災害を中心に 宮本憲一

第?部 労働と関係する病気の予防と働く人の健康増進
第1章 労働関連疾患としての循環器疾患,糖尿病,不眠症などの実態,予防対策 吉岡英治/西條泰明/ 岸-金堂玲子
第2章 印刷労働者の胆管がん多発はなぜ起こったのか―化学物質による健康障害を防止するために 熊谷信二
第3章 職場のメンタルヘルス―現状と課題 川上憲人
第4章 これからの職場のメンタルヘルス対策第―1 次予防への新しいアプローチと職場復帰への支援 川上憲人
第5章 女性労働者の健康と安全 北原照代/岸-金堂玲子
第6章 働く高齢者の健康・安全―現状と課題 神代雅晴

第?部 これからの職域保健サービスのありかた―重要な専門職の役割
第1章 労働安全衛生法体系と自主的改善のありかた 小木和孝
第2章 産業医制度の歴史・現状・課題 堀江正知
第3章 産業看護職【制度】の歴史と課題 五十嵐千代
第4章 オキュペーショナルハイジニストの重要性―日本でどう育てるか? 橋本晴男
第5章 それぞれの職場における産業技術職の活動・位置づけと教育訓練 酒井一博
第6章 中小企業・小規模事業所における産業保健活動―現状・課題と今後の方策 柴田英治
第7章 地域における産業保健活動の現状と課題,方策 宮下和久

第?部 新しい取り組みの強化―世界の潮流を踏まえてどのような改革と改善を進めるか?
第1章 未来の労働者の健康・安全・生活を守るために 森岡孝二/久永直見
第2章 国際労働基準の日本での批准状況 吾郷眞一
第3章 企業の労働CSR強化の方向性と労使関係の今後の在り方―真に社会的パートナーになりうるには? 吾郷眞一
第4章 子育てと仕事の両立の現状と課題―ワークライフバランスと家庭生活・健康の向上に向けて 小林章雄
第5章 税・社会保障一体改革により,「逆機能」の解消を 大沢真理
終 章 日本学術会議提言が実効あるものになるために―生活に根ざした改革のグランドデザインを 岸-金堂玲子

資 料: 日本学術会議 労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会「提言 労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの再構築を―働く人の健康で安寧な生活を確保するために」

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