マクドナルドの店長に対する残業代支給発表について

朝日新聞などによれば、5月20日、日本マクドナルドは、直営店の店長など約2千人に、本年8月から残業代を支払うと発表した。その内容はこれまで残業代を支給していなかった店長を管理職(労働基準法第41条2号にいう「管理監督者」)から外し、店長にも残業代を支払うというものである。ただし、店長手当が打ち切られるので、受け取る賃金は増えないという。

マクドナルドに対しては、直営店の店長の高野広志さんが管理職の名目で同社が残業代を支払わなかったのは違法だとして起こした裁判で、東京地裁は、去る1月28日、高野さんの主張を認め、約750万円の支払いを命じる判決を出した。しかし、同社は、店長はあくまで残業代のつかない管理職であるとしてただちに控訴した。今回の発表でも、同社は過去にさかのぼって支払うものではないと言明している。これでは、同社は店長にたいする残業代の不払いをサービス残業とは認めていないことを意味する。

ここ数年、大企業などで労働基準監督署の指導を受けて残業代未払いの是正が行われる事例が増えている。それらの企業では、過去2年間にさかのぼって、その間の退職者を含む該当企業の社員に対して、時間外労働(残業)の未払い分が支払われてきた。労働基準行政の公平性を損なわないためには、労基署はマクドナルドに対して過去にさかのぼって是正するよう指導するべきである。

マクドナルドは新しい制度によって、職務給部分(店長手当)を残業代に充てると同時に、残業をできるだけ減らすという。しかし、残業を減らし過重労働を解消するための人員増や時短の措置は講じられそうにない。とすれば、結局はサービス残業が温存されことになろう。同社に限られたことではないが、企業は、「名ばかり管理職」の解消にあたっては、従業員にたいする残業代の支払い義務とともに健康配慮義務を誠実に履行することが求められている。

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