「裁量労働制」の実態…編プロ社員の残業が月100時間超でも手当は約4万円

19日放送の「WBS(ワールドビジネスサテライト)」(テレビ東京系)で、裁量労働制をめぐる問題の実態を伝えた。
「裁量労働制」とは、働く時間を自分で決められる労働者に企業が「みなし残業代」を支払う制度のこと。ゲーム制作や弁護士、証券アナリスト、映画制作などが対象となる。
これまでは限られた職種・業務に適応されていたが、政府はこの制度を働き方改革関連法案で一部の営業職などにも広げようとしている。しかし、残業代削減のために企業に乱用される恐れも指摘されている。
番組では、先月まで約5年間、ある編集プロダクションに在籍していた30代女性のAさん(仮名)を取材し、同制度の問題点を浮き彫りにした。Aさんは、執筆・編集など本を作る作業全般を担当。忙しい時期には残業が月に100時間を超えることもあった。
当時、Aさんの月給は約21万8000円で、そのうちみなし残業代は約4万円。そのため、どれだけ残業しても金額が増えることはない。長時間労働が続いたことでAさんは、昨年11月に会社で倒れ意識不明になった。数日間入院し一度は復帰したが、仕事の継続が困難だと判断し退社した。
■政府による裁量労働制の拡大 不適切データで謝罪も
その後、Aさんは労働組合に相談し会社に未払い分の残業代を請求した際、初めて自身が裁量労働制での採用だったことを知ったという。Aさんは「就業規則書に書かれていると思うが、会社には置かれておらず誰にも読めないようになっていた」「入社したばかりで仕事に慣れていない。裁量なんてないのに全員裁量労働制適用と書かれていた」と不満を訴えた。
Aさんから相談を受けた組合が会社と交渉した結果、残業代が支払われる方向で調整されているという。
先月、安倍晋三首相は国会で「裁量労働制の人の労働時間は一般労働者よりも短い」と、厚生労働省のデータをもとに発言した。しかし、野党からデータが怪しいと指摘されると、使われたふたつの労働時間のデータが、まったく異なる条件で行われた調査結果だったことが発覚。異なるデータを比較し発言したこと自体が不適切であったとして、安倍首相は発言の撤回と謝罪をした。

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