東京社説 育休給付増額 男性の取得にまだ「壁」

東京新聞 2013年11月7日

 育児休業を取得した人に支給される給付額の引き上げが検討されている。給付増は取得率が上がらない男性の育児参加が狙いだ。経済支援になるが、仕事と子育てを両立するにはまだ壁がある。

 子どもが生まれて休業すると雇用保険から育休給付が出る。休んでいる間の重要な収入だ。今は原則、子どもが一歳になるまで賃金の五割が支給される。

 厚生労働省は、半年間に限り賃金の三分の二に引き上げる案を考えている。共働き夫婦が育休を半年ずつ取れば一年間有効になる。二〇一四年度中の実施を目指す。

 これまで男性の育休取得を促すため、夫婦ともに取ると育休期間を延長するなど制度拡充を進めてきた。だが、取得率は女性の83・6%に対し男性は1・89%と低いままである。

 家計を支えることが多い男性の収入が半減することがネックになっている。子育て世代の二十〜三十代は賃金も高くない。五割支給で男性の平均受給月額は約十四万円ほどだ。

 増額は生活を支える一助になるが、効果は限定的ではないか。

 欧州では賃金の八〜九割を支給する。次世代を育てるとの国の意思が明確だ。男性の取得率も高い。

 男性の取得が進まないのは収入のほかに職場の意識の壁がある。男性が休みにくい職場環境が残っている。残業が日常なら、なおさら周囲に気兼ねする。

 子育てを経験すると仕事との両立の必要性が分かる。女性社員に対する理解にもつながる。

 取得する男性にとっては、近所の育児家庭やそれを支える住民ら地域との接点ができる。長い子育て期間を夫婦で乗り切る下地もできる。そうなれば第二子や第三子まで持ちたいと考える人が増えるかもしれない。

 企業は取得者が増えるメリットを理解すべきだ。政府は非正規社員の取得率向上も含め、男性の育児参加の意義をもっと広める努力が要る。

 政府は、就業中の保護者が優先される認可保育所の利用要件を、求職中や就学中の人にも広げたり、育休から仕事に復帰する人なども優先利用を認める改善を検討中だ。施設整備と合わせ両立しやすい支援を整えるべきだ。

 安倍政権は「女性の活躍推進」を成長戦略に掲げる。それには男性の育児参加が不可欠だ。男女ともに仕事で力を発揮し子育てを楽しめる社会を実現したい。

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