労働基準監督署の役割

読売新聞 2013/11/05

作図 デザイン課・沢田彩月(省略)

 入社した若者を酷使するなど、雇用のあり方が問題になっています。「労働基準監督署」は、どんな仕事をしているのですか?

職場での法律違反を調査

 「サービス残業を強いられた」「一方的に解雇された」

 こうしたトラブルが後を絶たない中、労働条件の確保・向上を図るため、職場で法律が守られているかどうかをチェックするのが労働基準監督署だ。厚生労働省の出先機関で、全国に321か所ある。

 主な仕事は、事業所への監督指導だ。労働者からの申告・情報提供や、過去の指導実績などから、問題があると考えられる事業所を選定。特別司法警察職員でもある労働基準監督官が、労働基準法などに基づき、事業所の立ち入り調査などを行う。法違反があった場合は、是正勧告や改善指導を行う。それでも改善しないなど悪質な事業所には、任意の取り調べや逮捕などの強制捜査も行い、各地の検察庁に送検、公表する。

 このほか、労災の認定や、労災保険の給付に関する仕事、機械の検査など安全衛生に関する業務も担っている。

 厚労省によると、全国の労基署が受理した労働者からの申告件数は、約3万1000件(2012年)。賃金不払いに関するものが大半だ。送検した件数はここ数年、年間1000件を超える。

 法違反の内訳(12年)は、必要な手続きを怠るなどして「違法な時間外労働(残業)を行わせた」(31・3%)が最も多い。次いで、「機械や設備などの安全基準を満たしていない」(28・2%)、「残業代を支払わなかった」(22%)と続く。

 違反を見抜くことは簡単ではないが、未払い残業代を申告する際は、タイムカード、給与明細、就業規則のほか、業務に関連したメールなどがあると役立つようだ。

 労働者と事業主の間の個別労働紛争相談件数は25万件を超え(12年度)、いじめや嫌がらせの相談が増加傾向にある。若者を使い捨てにする「ブラック企業」対策など、労基署の役割は重みを増すばかりだ。だが、監督官1人当たりの労働者数は約1万6400人と、ドイツ(約5300人)、英国(約1万800人)と比べて手薄で、体制強化を求める声も強い。

 各地の労基署は厚労省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/location.html)で検索できる。(大津和夫)

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