「迷走する教員の働き方改革」刊行/著者インタビュー (3/4)

「迷走する教員の働き方改革」刊行/著者インタビュー
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連合通信 2020/03/04

 昨年末の給特法改正で、公立学校教員への導入が可能になった1年単位の変形労働時間制(以下、変形労働制)を中心に、長時間労働の現状と課題を探る「迷走する教員の働き方改革」が3月4日、岩波書店から刊行される。共著者である名古屋大学大学院准教授の内田良さんと現役高校教員の斉藤ひでみさんに話をきいた。

●目標とは無縁の制度改革/名古屋大学大学院 内田良准教授

 ――「迷走する教員の働き方改革」をタイトルにした思いは?

 内田 教員の長時間労働を減らすことが働き方改革の目標なのに、変形労働制の導入という、目標とは無縁の大規模な制度改革が行われました。まさに迷走という形容詞がぴったりです。

 ――今回の改革では民間同様、「月45時間内、年360時間内」の時間外勤務の上限が指針に格上げされました。

 部活動や授業準備などの時間外勤務は、給特法によって労働と認められていません。民間の場合、残業は労働なので法律の保護や規制を受けます。しかし、教員はそれらを伴わないまま、上限時間を抑制するというだけで、非常にもどかしいですね。

 ――変形労働制の導入は現実的でしょうか?

 そもそも1年中、残業が発生しているので、変形労働制が(時間外勤務の抑止力として)機能するという論理は展開できず、現実的ではありません。財源上のメリットもありませんから、授業期間中の所定労働時間を延ばすことで、残業時間が減ったように見えるだけです。何も変わらないでしょう。

 変形労働制を導入するのなら、厚生労働省の通達の通り、一切の残業がなく、業務が所定労働時間内に収まっていることを前提とすべきです。

 ――長時間労働の解消に教員増は必須ですか?

 教員増という昔からのスローガンを全面に出して繰り返すのではなく、学校の中で起きている教員の働き方の実態について、個別具体的な問題を取り上げ、そのエビデンス(科学的な証拠)を示し、「見える化」することに注力しています。教員バッシングや労働組合に偏見がある中では、教員増を求めるスローガンを打ち出すよりも、個別具体的な問題を一つ一つ検討していく。そうしていけば、おのずと教員増が不可欠であるという結論にたどりつくと考えています。(つづく)

 

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