新型コロナで非正規の相談増 無給で休業、有休を強要 (3/21)

新型コロナで非正規の相談増 無給で休業、有休を強要
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57074110R20C20A3CZ8000/
日経新聞 2020/3/21 19:24

新型コロナウイルスに伴う休業などを巡り、労働組合の窓口に契約社員やアルバイトなど非正規雇用の人からの相談が増えている。雇用主から無給で出勤停止にされるなど法令違反が疑われる事例もあり、専門家は「ウイルス対策を名目にした不当な扱いは許されない」と指摘する。

労働組合「ジャパンユニオン」では、電話やメールで新型コロナウイルスに関連する労働相談を受け付ける(3日、東京都葛飾区)
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労働組合「ジャパンユニオン」では、電話やメールで新型コロナウイルスに関連する労働相談を受け付ける(3日、東京都葛飾区)
「2週間無給で休むように言われた」。インターネット上で加入できる労働組合「ジャパンユニオン」(東京・葛飾)には、都内の医療機関に勤める契約社員の女性から相談があった。

休みの理由は「感染予防のため」。女性が雇用側に休業手当を求めると、担当者は「それなら来てください」と対応を変えたが、これまで職場が室内だった女性に「屋外で働いてもらう」などと業務の変更を一方的に告げたという。

同ユニオンが2月下旬に新型コロナウイルスに関する労働相談の専用窓口を設けたところ、5日間で平時の20倍にあたる100件超の相談が来た。菅野存執行委員長は「感染防止のため事業を縮小させた会社が適切な対応策も示さず、非正規雇用の人を休ませるケースが目立つ」と話す。

東京労働局によると、自社の判断で労働者を休ませた場合、労働基準法により雇用主は休業手当として平均賃金の6割以上を支払わなければいけない。一定の期間働いた労働者に与えられる有給休暇は労働者が休みたいときに使う休暇で、休業などに伴って雇用主が有休取得を強制することはできない。

個人で加入できる全国一般ユニオンおおさか(大阪市)には、語学学校で非常勤講師として働く女性から「『政府の要請があったから有休を使って休んでほしい』と言われた」との相談があった。女性は「有休の日数は半月分もない」と困惑した様子だったという。

2008年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災発生時にも多くの工場や事業所が操業を縮小し、一部の企業が派遣社員に休業手当を支払わなかったり、契約を打ち切ったりする問題が起きた。

労働問題に詳しい甲斐田沙織弁護士は「非正規雇用で働く人たちを保護する制度の周知不足が新型コロナウイルスによる混乱で顕在化した」と指摘する。労組関係者の間では「経済の冷え込みの影響で雇い止めや派遣切りといったより深刻な状況に陥る可能性がある」という懸念が広がる。

政府は全国の学校に休校を要請したことを受け、小学生までの子どもを持つ保護者が休業した場合に日額8330円を上限に事業者へ賃金を補償する制度を設けた。企業に対しては「労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えてほしい」と呼びかけている。各労働局は新型コロナウイルスに関連する相談の特別窓口を開いている。
 

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