非正規全国会議、新型コロナウイルスによる影響についての緊急アンケートの回答を受け、提言 (4/6)

提言書

内閣総理大臣安倍晋三殿
財務大臣麻生太郎殿
厚生労働大臣加藤勝信殿

2020年4月6日
非正規労働者の権利実現全国会議   
代表幹事 脇田滋(龍谷大学名誉教授)
  同    中村和雄(弁護士)    
(連絡先)事務局長   村田浩治(弁護士)    
〒590-0048堺市堺区一条通20番5号銀泉堺東ビル6階
堺総合法律事務所
℡ 0722-21-0016 fax 072-232-7036
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 当全国会議では、3月18日から、非正規雇用労働者及びフリーランスの方を対象に、インターネットを通じて新型コロナウイルス感染症の拡大による仕事・雇用への影響についてのアンケートを実施し、雇用、生活をめぐる状況を把握してきました。

 このアンケートには、規模や方法で大きな限界がありますが、同アンケートには、3月31日までに272件の声が寄せられました。

 これらの寄せられた声から、自営業者、中小零細業の労働者、非正規雇用(有期雇用、派遣労働、パート、アルバイトなど)、請負・委託など雇用でない形態での就業者(以下、「フリーランス」)が新型コロナウイルス感染症の影響により、雇用・仕事を失い、これらの方やその家族の生活が脅かされていること、また日々の業務においても感染の危険にさらされたり、より一層の過重労働によって健康を脅かされていることの一端が明らかになっています。

 そこで、これらのアンケートに寄せられた声を踏まえて、当全国会議では、政府に対し、以下の提言を行います。

第1 提言内容

1 非正規雇用労働者・フリーランスの雇用・仕事を守ること

(1)雇用の継続解雇・濫用的雇い止め禁止
 経営者・使用者による安易な解雇、雇い止めを厳しく規制すること。特に、派遣切り、非正規切りなど、弱い立場の労働者が雇用を失い、生活の保障を無くさないような法規制を含め、非常時に対応する特別措置をとること。

(2)雇用における休業補償
 経営者・使用者に対し、賃金全額相当の休業手当を支払うよう指導するとともに、政府は、企業の支払う休業手当が全額相当でないときまたは休業手当を支払わないときは上乗せして100%の補償をする特別の措置をとること。とくに、勤務時間・シフトの削減なども「使用者の責による休業」であり、本来は、民法536条2項に基づく賃金支払義務(少なくとも労基法26条に基づく休業手当支払義務)があることを企業(使用者)に徹底させること。

(3)フリーランスに対する契約打ち切りの制限、休業(所得)補償
 フリーランスに対する安易な契約解除・打ち切りを制限する特別措置をとること。また,仕事を失ったフリーランスに所得補償の特別措置をとること。

(4)特に被害の大きい業種についての特別の措置
 観光、旅行、イベント、飲食、旅客運輸などの仕事の打ち切り、キャンセルが格段に多く被害の大きい業種を特定し、雇用安定を図るための格段の特別措置をとること。

2 職場における労働者の安全・健康確保

(1)医療、介護、福祉、教育などの業種についての特別の措置
 医療、介護、福祉、教育など対人サービスに従事する人が、感染の危険を避けて安全に働けるように、これらのサービス従事の現場では、①経営者に対して感染症対応の安全管理を徹底させること、②安全確保のための必要な物資(マスク、消毒剤、防護服など)の提供、③人員確保支援など、働く人の生命・健康を最優先する特別措置をとること。

(2)非正規雇用の労働者も含めた全労働者に対する安全確保措置の実施
 働く現場での安全確保措置について、経営者(派遣元・元請事業主を含む)が、非正規雇用労働者と正規雇用労働者との間に不合理な待遇差を設けることがないように厳しく規制すること。

3 非正規雇用労働者及びフリーランスを対象とする本格的実態調査の実施

 政府として、最も深刻な被害を受ける非正規雇用労働者やフリーランスなどを対象に本格的な実態調査をすること。

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