■Cura Italia法律命令第18号(2020年3月16日)
政府は、3月16日に「Cura Italia(イタリアを治癒)」と呼ばれる、危機対応緊急措置を総合的に定める法律命令を公布しました。この「Cura Italia」法律命令に、CGILを初めとする労働側の要求の多くが反映されることになりました。
これは、危機時の雇用・生計維持のための緊急対策を包括的に提示するものです。関連して、政府は総額250億ユーロ(約3.4兆円)を緊急に出費しました。このうち100億ユーロを雇用や労働者支援に、35億ユーロを国家保健医療システムの強化に投入します。具体的な内容は以下の通りである。
<「イタリアを治癒(Cura Italia)」法律命令の主要内容>
□1)家計支援:
△国家社会保障制度に加入した民間/公共部門労働者の子どものケア休暇15日延長(賃金50%保障)、12歳~16歳の子どもを持つ親の場合、無断欠勤の許可(解雇事由にならない)
△育児ボーナス(バウチャー)最大600ユーロ支給、治安・国防などの従事者の場合1,000ユーロまで支援
△重度障害者の休暇12日追加。重度障害者または重度障害者家族がいる労働者は在宅勤務
△実居住住宅、住宅担保融資返済の猶予。強制退去禁止
△各種許認可証の満了日延長(6月31日)
□2)労働者支援(104億ユーロ)
△通常所得補償金庫(CIGO)および賃金維持基金(FIS)適用要件の緩和(1人以上のすべての事業場に適用、勤続要件、保険料納付期間などの要件適用中断、FISの場合は5人以上の事業場に支給)
△労働者の雇用や所得を保護するために、全生産部門の従業員を対象に特例所得補償金庫(Cassa Integrazione in Deroga)からの給付を可能にする。新型コロナの影響により活動を縮小をしている事業主は、従業員の給与支払いに際し最長9週間、同金庫からの給付を活用できる。
△自営業者、観光などにおける季節労働者、自営業者、独立契約者、公演芸術家など観劇関連労働者、農業従事者などに対し、月当600ユーロの給付金を最長3カ月間給付
△社会的緩衝措置にアクセスできないか、または、すでに利用済の労働者のための特別基金作り
△全労働者に3月補償金として特別退職金(13日)および有給休暇を支払う
今回の支援の特徴は、いわゆる正規労働者だけでなく、最も弱い立場にある派遣労働者(interinali)、自営業者(lavoratori autonomi)、協働者(collaboratori)、とくに、スポーツ協働者(collaboratori sportivi.)など、労働者性が明確でない個人事業主形態の就業者も対象とした数多くのきめ細かな所得支援を導入していることです。
注目されるのは、例えば、派遣会社(agenzie di somministrazione)によって雇用された就業者についても、立法者は、連帯基金(Fondo di Solidarietà del settore)の支援に介入し、基金が確保した財源が使い果たされた場合、特例所得補償(cassa integrazione in deroga)にアクセスできる道も提供していることです。さらに、低収入で働き続けた人に対して3月について100ユーロのボーナスを支払うことにしたことも、弱い立場の就業者に目を向けた政策と評価されています。
□3)保健医療サービスの強化(35億ユーロ)
△新規人材の採用
△緊急事態に投入される医療労働者への超過勤務手当拡大
△保健・医療専門家の配置
△肺炎感染症治療のための集中治療室の病床確保
△医療費の支出限度を緩和して民間病院を動員
CGILは、政府の緊急対策について「コロナ19危機の間、雇用を維持し賃金を保障するための社会保障制度をすべての労働者に拡大適用し、非専門労働者、自営業者、フリーランスなどのための対策が含まれた」という点を肯定的に評価しました。
【参考情報】
□Comunicato stampa del Consiglio dei Ministri n. 37(2020.3.16)
□反コロナウィルス:イタリア治癒しよう立法命令措置に対するCGILのコメント(2020.3.20)
□コロナ危機に対する海外の労働組合の対応(2020.4.1レディアン)
□新型コロナウイルスの感染拡大、経済に甚大な影響(2020.4.3 Jetro)