伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「雇用・失業の新局面 ― 休業者600万人の衝撃」 (5/31)

 より不安定な非正規雇用の休業者
 図5-1,図5-2, 図5-3は2018年、19年、20年の各4月の休業者を雇用形態別、従業状態別に比較したものです。従来の休業者は正規雇用の方が非正規より多かったのですが、20年4月は非正規雇用が正規雇用や自営業主、役員の休業者を圧倒しています。これは卸売・小売業を含む消費関連サービス部門の多くの企業が営業自粛を余儀なくされたことが大きく関わっています。これらの部門では非正規比率が高いからです。
 ただし、男女別で大きな違いがあります。男性では正規雇用の休業者が非正規を上回っていますが、女性では非正規雇用(216万人)が休業者(357万人)の6割を占めています。19年4月時点では正規雇用の休業者の方が非正規よりも多かったことを見ると、コロナ危機がいかに大きな変化をもたらしたかがわかります。

図5-1 従業上の地位・雇用形態別の休業者の構成

図5-2 従業上の地位・雇用形態別の休業者の構成

図5-3 従業上の地位・雇用形態別の休業者の構成

 図6は女性労働者の休業者の推移を正規・非正規別に示しています。これまで7月、8月、3月に非正規雇用の休業者が正規雇用の休業者を上回っているのは学生アルバイトの動きと関連しているのではないでしょうか。それ以外の期間は正規雇用の方が非正規よりも休業者が多かったのですが、育児・介護休業を取得する割合が非正規女性より大きいことがその背景にあると考えられます。しかし、コロナ危機は非正規女性1379万人のうち、216万人を休業状態に追いやりました。およそ6人に1人に相当します。
 非正規雇用で働いている中年(35~64歳)の単身女性はおよそ80万人です(「就業構造基本調査」2017年)。こうした単身女性が休業を余儀なくされた場合、どうやって生計を維持すればよいでしょうか。とりわけシングルマザーの困難はいかばかりでしょうか。

図6 女性労働者の休業者の推移

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