九電やらせメール 文例も用意 6パターン投稿依頼

2011/07/15 東京読売新聞
 

九州電力が14日公表した「やらせメール」の調査報告書は、賛成投稿の文例が作成されていたことなど、巧妙な裏工作の実態を明らかにした。問題の発端となった上層部の謀議も「あうん」の呼吸で決まっており、原子力発電所を巡る世論操作の常態化がうかがえる。(後段に森岡のコメントあり)

原子力担当の段上(だんがみ)守・副社長、諸岡雅俊・原子力発電本部長、大坪潔晴(きよはる)・佐賀支店長(いずれも当時)が顔をそろえたのは、県民説明会が開かれる5日前の6月21日。段上、諸岡両氏は退任のあいさつ回りのため、佐賀市を訪れ、大坪氏と合流した。

段上氏によると、説明会が話題になったのは、市内のそば店で昼食をともにした時だった。
「近々(説明会が)あるんですよ」
大坪氏がこう切り出すと、段上氏らは「(説明会があることを)知らせる必要があるね」「じゃあ、お願いね」と話した。
佐賀支店長経験者によると、支店にとって玄海原発の安定運用は最重要課題で、支店長の業務の8割は原発関係だという。福島第一原発の事故で原発への不安感が高まっている状況から、3人の幹部には焦りがあったとみられる。

指示を受けた大坪氏は翌22日、支店の総務部長ら3人の部長に、具体的な方法の検討を指示した。総務部長らは、賛成投票をより確実に実行させるため、電気が止まると困る取引先をピックアップ。用意した6パターンの文例を持参するなどし、自動車関連会社の取引先や大口顧客など計31社に投稿を依頼した。

思惑通り、全ての会社から投稿がなされ、ほとんどが文例に似通った内容だった。こうした指示に問題があると判断して、投稿依頼をしなかった電力所長も2人いたというが、結局、佐賀支店の要請による投稿者数は、全体の141人の6割、90人を占めた。

一方、段上氏は14日、大分市の自宅前で取材に応じ、「説明会を活発化するには、たくさんの人が参加するのが大事だと思った」と釈明した。しかし、「やらせ」の指示については、「それは全くありません」と、きっぱり否定した。

企業のコンプライアンスに詳しい森岡孝二・関西大教授(企業社会論)の話「投稿要請が表面化しないよう対処した形跡がなく、九電側には社会的に許されない行為との認識がなかったのでは。第三者による真相究明を図らなければ、信頼回復はできないだろう」
    
 ◆九州電力佐賀支店が取引会社に渡した意見投稿の文例の一部(抜粋) 
・電力が不足していては、今までのような文化的生活が営めないですし、夏の「熱中症」も大変に心配であります。犠牲になるのは、弱者である子供や年配者の方であり、そのような事態を防ぐためにも、原子力の運転再開は絶対に必要であると思います。
・太陽光や風力発電は天候に大きく左右され、利用率が大変に低いと聞いております。代替の電源と成り得ることは到底無理であると思います。よって、当面は原子力発電に頼らざるを得ないと思います。
・各電力会社では(原発の)「緊急安全対策」に加え「シビアアクシデント対策」を実施しているとの新聞報道がありました。国も「発電再開しても問題ない」と示しているにもかかわらず、何故発電再開が出来ないのでしょうか。

 

この記事を書いた人