第146回  就職新氷河期で増える学生の就職失敗自殺

就職氷河期の再来が心も凍る「就職新氷河期」と呼ばれるこのごろ、学生の就活うつが増えています。それだけでなく、就活の失敗に起因する学生の自殺が急増しています。

警察庁によれば、2010年の「就職失敗」を原因あるいは動機とする大学生の自殺者は、前年の2倍の46人(男性40人、女性6人)になりました(警察庁「平成22年中における自殺の概要資料」2011年3月3日)。

学生の就職失敗による自殺者の数は、2007年は13人(男性13人、女性0人)、2008年は22人(男性17人、女性5人)、2009年は23人(男性18人、女性5人)でした。

2008年から2010年で見ると、大学生のあらゆる原因による自殺者総数は536人から513人に減少しています。にもかかわらず、就職失敗を原因とする大学生の自殺が増加していることはゆるがせにはできません。

近年は、30代、さらには20代の若い労働者の過労自殺が増えて社会問題になっています。過労自殺では企業の責任が問われますが、就活自殺は、面接の失敗や圧迫面接が引き金になったとしても、加害責任を特定することが難しく、労災保険制度のような補償のあてもなく、内密にしたいという保護者の心情もあって、社会問題になりにくいと言えます。それだけに大学関係者は学生の就活自殺の増加に警鐘を鳴らす必要があります。

先の数字は、就職の失敗による大学生の自殺者は男子のほうが女子よりずっと多いことを示しています。それは、社会人でいえば、男性のほうが女性より過労死・過労自殺の犠牲者が多いことと無関係ではありません。これには、いまなお男性中心社会の日本では、男子学生は女子学生以上に「よい就職」に対する本人や家族のこだわりが強く、それだけ就活のストレスも高いという事情があると考えられます。

しかし、このことは女子学生のほうが男子学生より就活の苦労が少ないということを必ずしも意味しません。むしろ、女子学生は、総合職の門が狭いうえに、一般職の採用が厳しく抑えられています。そのなかで、男子より多くの企業に応募しながら、内定がなかなか取れず、内定の出る時期も男子より遅く、内定率が低い反面で、「泣いている率」が高いのが女子学生です。

とはいえ、それ以上に泣いているのは、就活の失敗で自ら命を絶った息子、娘の親たちです。それを思うと、悲しさと腹立たしさでいたたまれない気持ちになります。

お断り:『就職とは何か−−新社会人読本』(仮題、岩波新書、2011年11月刊行予定?)の原稿に追われているために、この後1ヵ月ほどお休みをいただきます。

 

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