手配師、労働者あっせん 向かった先は宮城の建設業者

河北新報 2013年03月29日
 
JR仙台駅周辺で活動する「手配師」が宮城県内の建設業者に労働者をあっせんしていたことが、関係者への取材で分かった。東日本大震災関連の仕事を求める人らに声を掛け、業者の寮に住まわせる。労働者は身分証明を求められず、寮と工事現場を行き来していた。

 関東出身の30代男性は昨年6月、仙台市を訪れた。消費者金融などで100万円以上の借金を抱えていた。「震災関連の仕事なら金になると思い、仙台に行くと決めた」と打ち明ける。

 しばらくアルバイトで食いつないだ。仙台駅付近をさまよっていると、知らない中年の男に声を掛けられた。

 「住み込みでご飯や風呂、寝る場所がある。解体関係の仕事だ。やってみないか」
手配師だった。

 そのまま車に乗り込むと、運転席に建設業者の関係者がいた。向かった先は業者の寮。1部屋に4人が寝泊まりした。

 男性が寮で確かめた労働者は30人程度。40代、50代が多く、30代は若手だった。主な仕事は病院や学校の内装や解体で、3カ月程度働いた。

 昨年夏、仙台に来た岩手県出身の30代男性は、関東の精密機械製造工場で派遣社員として働いていたが、減産の影響で解雇された。

 仙台駅前で求人情報誌を読んでいた時、手配師の男に誘われ、同じ建設業者の下に連れて行かれた。

 寮で暮らし、解体工として約3カ月働いた。業者からは身分証明書の提示を求められず、男性は素性を明かさなかった。業者の幹部はこう告げたという。

 「ここにはいろいろな過去を持つ人がいる。本当のことを言う必要はない」

◎日当5000円の約束→40日働きたった1万5000円

 手配師との関わりが表面化した建設業者について、雇われた複数の労働者は「賃金の実態が不透明だった」と証言する。働いていた当時、雇用関係の書類も渡されていなかったという。

 ある男性は昨年、業者の下で約40日働いた。日当は約5000円の約束だった。合計の賃金は約20万円のはずだったが、支払われたのはわずか約1万5000円だった。

 男性側は「食費や寮費、作業着代を差し引かれた」と主張。「知らないうちに何らかの借金を負わされ、賃金で相殺されていたのかもしれない」と推測する。

 別の男性も賃金はほとんど支払われなかった。「必要な都度、業者から金を借りた。利子が高く、手元に金が残らなかった」。不満が募り、業者から逃げた。

 労働者支援組織の関係者は「業者の中には賃金トラブルが起きても物証が残らないよう、雇用通知書といった書類を労働者に渡さないケースがある」と指摘。「業者は雇用の条件を書類で明示し、賃金をしっかり支払ってほしい」と訴える。

 一方、建設業界からは「働く意欲がないのに賃金を要求する人や、働きぶりが悪く賃金の支給条件に見合わない人もいる」との声も漏れる。

 仙台労基署の担当者は「震災関連の工事現場などでは業者に対し、雇用通知書などを交付するよう指導している。労働者は業者に支払いを請求しても実行されない場合、労基署に相談してほしい」と呼び掛ける。

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