「仕事疲れ」の自殺が再び増…遺族に消えぬ自責

http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20150521-OYO1T50024.html
Yomiuri Online 2015年05月21日

 過労が理由とみられる自殺が増えている。警察庁の統計で「仕事疲れ」による自殺者は2012、13年と2年連続で減少したが、昨年は増加に転じ685人(前年比36人増)に上った。昨年11月施行の「過労死等防止対策推進法」に基づき、国は自殺を含む過労死の実態調査などを行うが、遺族や弁護士らも各地で市民団体を作って、労働者の相談を受けたり、大学で特別授業を開いたりと防止に向けた活動が広がり始めている。

 警察庁の統計によると、自殺者数は防止策の強化や景気回復などで10年から5年連続で減り、昨年は2万5427人(前年比1856人減)。一方、同庁が「仕事の失敗」「職場の人間関係」など原因を遺書などから分析し始めた07年以降、過労など「仕事疲れ」とみられる自殺者は700人前後で高止まりし、13年は649人まで減ったが、昨年は685人に増えた。

 うち男性は91%(623人)。年代別では〈1〉40〜49歳 186人(前年比2人増)〈2〉30〜39歳 152人(同13人増)〈3〉50〜59歳 148人(同5人増)〈4〉20〜29歳 134人(同2人増)――の順だった。

 総務省の調査(13年)では週60時間以上働く人の割合は全体の8・8%に対し、30歳代男性で17・6%、40歳代男性で17・4%とほぼ2倍に上っている。

 厚生労働省は4月下旬、同法に基づく大綱素案を公表、20年までに週60時間以上働く人を5%以下に減らすなど目標を掲げている。「過労死や過労自殺の詳しい実態はわかっておらず早急に調査したい」とする。

 増加の背景について、過労死問題に詳しい森岡孝二関西大名誉教授(企業社会論)は「不景気で正社員の採用抑制が続いた後、景気が上向いてきたため、少ない社員で急増する仕事量をこなさなければならない状況があるだろう。特に働き盛りの30〜40歳代の男性は長時間労働の傾向が強い。助け合う風土が失われ、パワハラが横行する会社もある。過労の人は必ずSOSを出しており、周囲の対応が重要だ」と指摘する。

この記事を書いた人