朝日新聞 2012年10月13日
【小室浩幸】全国の私立高校で「非正規」の非常勤、常勤講師が増えている。2011年には合わせて約3万4千人に達し、全体の36.8%を占めたことが文部科学省の調査でわかった。背景には生徒数の減少による経営難がある。雇用が不安定な非正規教員の増加で、教育の質の低下を懸念する声もあがっている。
文科省の調査によると、非正規教員の比率は、公立高(19.7%)より17ポイント以上高かった。01年と比べると、私立高の教員数は9万数千人でほとんど変化がないが、雇用期間に定めがない正規教員は、退職者補充などが抑制された結果、約4千人減少。逆に非正規教員は2800人増えて約9%の増加となった。
少子化で、私立高の生徒数が激減している。日本私立中学高等学校連合会によると、10年間で生徒総数は15%減少。経営難の高校が増え、総経費の約7割を占める人件費が重荷になる一方、少人数の授業や習熟度別クラスなどに対応するために教員数は減らせない。
フルタイムで働く教員にかかる人件費は1人あたり平均827万円(10年)で10年間で7%下落。同時に数を維持するため正規から非正規への置き換えも進み、平均人件費率は70%から66%に下がった。
継続した勤務が難しい非正規教員の増加が、教育現場に与える影響は大きい。だが「経営の苦しい学校では人件費にしわ寄せが行く状況が今後も続く」(同連合会)との見方が多い。教員確保が難しい私学では、人材会社から派遣される教員を活用する学校もある。
文科省によると、教員の雇用形態に関する規制はなく、私学行政課は「各校の状況を踏まえ、適切に判断していただきたい」と説明する。