来日実習生「時給25円」…人手不足、制度拡充の方針

朝日デジタル 2014年12月25日

写真・図版:約50年後には15〜64歳の生産年齢人口は3500万人減る(省略)

 目の前に置かれた現金約10万円から、社長が約4万円を住居費などの名目でとっていった。日本での就職を仲介してくれたバングラデシュ人が、後日5万円を抜くと、手元に残るのは月1万円だけだった。

 「月16万円ほどは稼げる」と聞き、バングラデシュ人の元外国人技能実習生のベガム・ラベアさん(26)が来日したのは2011年秋。長崎県内の縫製工場で、中国人の実習生ら20人ほどと一緒に働いた。

 ラベアさんによると、彼女たちは、時には未明までミシンがけなどに追われた。休みは月2〜3日。月400時間以上働き、残業は月200時間を超えた。1万円の手取りを時給に換算すると「25円」以下だった。工場と同じ敷地内の寮の1部屋に実習生10人と寝泊まりし、外出にも許可が必要だった。近所の農家にもらった野菜を食べた。

 12年8月、職場への不満を訴えると、帰国させられそうになった。ラベアさんは福岡空港の搭乗口で泣きじゃくり、飛行機に乗るのを拒んだ。そのまま縫製工場には帰らず、知人のツテを頼り、いまは別の食品工場で働く。縫製工場の当時を「奴隷のような扱いだった」と振り返る。

 人口減を背景にした人手不足は深刻だ。安倍政権は、現在15万人いる外国人実習生の拡充を打ち出す。

 ラベアさんは13年春、社長らを相手に賃金支払いを求め提訴した。弁護士によると、月給約10万円でも長崎県の当時の最低賃金(646円)を下回るという。社長に取材を申し込むと、「訴訟中で話せない」。

 厚生労働省が13年に監督や指導した実習生を受け入れる事業所のうち8割の1844事業所で、残業代未払いや長時間労働など労働関連法違反があった。このまま実習生の受け入れを増やして問題はないのか。(続く)
   (末崎毅、堀口元 編集委員・林美子 ソウル=貝瀬秋彦)

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