税制大綱決定: 潤う大企業・富裕層 庶民に配慮少なく

毎日新聞 2014年12月30日

税制改正大綱のポイント(図表省略)

 自民、公明両党は30日、2015年度与党税制改正大綱を決定した。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の柱と位置付ける法人税改革では、企業のもうけ(所得)にかかる法人実効税率を15年度から段階的に引き下げる。家計向けでは、高齢者の資産を子や孫に移し、住宅購入や育児などに活用してもらうため、贈与税の非課税制度を大幅に拡充。企業、家計向けの減税で賃上げや消費拡大などを促し、「デフレ脱却」を後押しする考えだ。ただ、好業績企業や富裕層への優遇が目立っており、減税の効果が幅広い層に波及するかは見通せない。

 与党の2015年度税制改正大綱は、法人税改革を目玉にする一方、暮らしに関わる税制で減税メニューを並べた。とりわけ、高齢者の資産を若い世代に移す際の贈与税を大幅に軽くするなど、富裕層への優遇が目立つ。

 祖父母や親が、子や孫にお金を贈った場合の贈与税の非課税制度を拡充する。住宅資金については、非課税枠(現行1000万円)を16年10月から最大3000万円に拡大する。教育にかかるお金を贈った場合、1500万円まで非課税とする措置も18年度末まで延長。新たに、結婚や出産、育児にかかるお金も1000万円を上限に非課税の対象に加える。

 また、株式などへの投資で得た利益への所得税を軽くする「少額投資非課税制度」(NISA)に、子供版の「ジュニアNISA」を新設する。子どもや孫の名義での年80万円までの投資について、運用益に課税しない。贈与や投資への減税について政府は「子育ての時期にあたり、いろいろな意味でお金がかかる若い世代に(高齢者から)資産が移転すれば、消費を喚起する」(麻生太郎財務相)としている。

 ただ、子や孫にまとまったお金を贈る余裕のない高齢者は、拡充のメリットを受けられない。

 4月の消費税率引き上げ後、低迷している住宅市場のてこ入れ策としては、17年末に期限を迎える住宅ローン減税を1年半延長することを決めた。17年4月の消費税率10%への引き上げ後の落ち込みを避けることも目指す。

 この他、自動車販売の下支えとエコカー普及のため、燃費の良い車を対象にした「エコカー減税」を、燃費基準を厳しくした上で延長。軽自動車税も新たに適用対象に加える。

 消費回復の前提となる賃金引き上げを促すため、給料を増やした企業の法人税負担を軽くする制度も拡充する。業績好調な大企業がどこまで制度を活用するかや、中小企業が賃上げできるほどの利益を上げられるようになるかが課題になる。

 負担増では、「わかば」「エコー」など、紙巻きたばこの一部銘柄(旧3級品)に適用されているたばこ税の軽減税率を段階的に縮小、廃止。インターネットを通じて海外から販売される音楽や電子書籍は現在、消費税がかけられていないが、15年10月から課税対象にする。【竹地広憲】

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