残業上限規制へ実態把握を優先 厚労省会議が初会合

日経WEB 2016/9/9
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07097010Z00C16A9EE8000/

 厚生労働省は9日、残業時間の上限規制についての有識者会議の議論をスタートさせた。政府の働き方改革実現会議と連携し、事実上、残業時間が際限なく延ばせる現状を是正する狙いだ。過度な長時間労働が常態化する原因の実態把握を進め、規制対象となる業種の絞り込みも検討する。

 有識者会議は働き方改革実現会議で具体的な規制策を議論する上での判断材料を提供する。

 労働基準法で定められた時間を超える労働を命じる際は、労使で「36(さぶろく)協定」を結ぶ必要がある。政府が問題視しているのは協定の特別条項だ。青天井で残業時間を延ばせるため、専門家からは長時間労働の一因と批判されている。これに一定の“天井”を設けるのが今回の上限規制議論の本丸だ。

 現状の36協定でも業務上の必要性から建設業や運輸業など適用が除外されている業種が複数ある。上限規制を設ける上での焦点の一つが適用する業種の範囲だ。9日の会合では「多様な職種や業種がある日本では一律の規制は困難」との意見が出た。

 過剰な長時間労働が深刻な業種は運輸業やIT(情報技術)業界などに限られるため、規制対象となる業種はある程度絞り込まれる見通しだ。厚労省の有識者会議では上限規制以外の長時間労働解消の方策や仕事と生活の両立についても議論する。

 塩崎恭久厚生労働相は「長時間労働を解消すること自体は労使ともに賛成」と指摘する。ただ、同日の会合では「上限を設けることで企業が長時間労働を隠す懸念がある」という慎重な意見も出た。

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