死者や搬送される職人続出…東京五輪、建設現場が「極めて危険な状態」、組織委に改善要求 (9/30)

死者や搬送される職人続出…東京五輪、建設現場が「極めて危険な状態」、組織委に改善要求
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buisiness-journal2019.09.30 構成=長井雄一朗/ライター

【この記事のキーワード】労働, 建設, 東京五輪, オリンピック, 新国立競技場

建設工事が進む新国立競技場(写真:AP/アフロ)

 開催まで1年を切った東京オリンピック・パラリンピック。現在、関連施設の建設が進んでいるが、現場の労働環境が「極めて危険な状況」にあると指摘されている。5月、約130カ国・地域の約335の労働組合が加盟する国際建設林業労働組合連盟(BWI)が、大会組織委員会や東京都、日本スポーツ振興センターに危険な現場や過重労働の実態を指摘する報告書を送り、改善を求めた。

 東京五輪関連施設をめぐっては、新国立競技場の建設工事に従事していた建設会社の男性社員が2017年に「極度の長時間労働」による精神疾患で自殺した件を含め、すでに2件の労働災害死亡事故が起きている。

 2月には、BWIに加盟する建設職人の労組である全国建設労働組合総連合(全建総連)が新国立競技場や選手村などの建設現場で働く労働者40人から聞き取り調査やアンケートを行ったが、そこでも危険作業が横行する実態などが明らかになった。五輪特需に沸く一方で危機が進行する建設業界の労働現場について、全建総連書記次長の奈良統一氏に聞いた。

「命がいくつあっても足りない」
――東京五輪関連施設の現場はどのような状況ですか。

奈良統一氏(以下、奈良) 工期が迫ってきているため、現場はかなり急かされている状況です。なかには、吊り上げられたコンクリートパネルの下で作業する現場もあるようですが、本来はあってはならないことです。何かの拍子にコンクリートパネルが落下すれば、作業員が死亡する可能性もあります。聞き取り調査では、「現場が狭くて資材を置く場所がない」「工期が短いため危険作業が横行している」などの声が寄せられました。

 選手村の建設現場で働いていた男性からは「誤った作業手順が進められ極めて危険で、命がいくつあっても足りない」との話もありました。選手村の現場は大手ゼネコンが施工していますが、大手でもこの惨状ですから、準大手、中堅、中小の建設会社が施工する現場は、さらにひどいのではないかと危惧されます。

――危険作業には、ほかにどのようなケースがあるのでしょうか。

奈良 本来はしっかりと工程が組まれ、足場や仮設施設を設置した後で作業するのですが、その足場などを撤去してから建築金物の取り付けを余儀なくされたケースもあります。足場がないので脚立で登ったり窓から身を乗り出したりして作業することになりますが、これらは違法になります。すべての現場で危険作業が横行しているわけではないと思いますが、なかには建設職人の安全が守られていない現場もあるのが実情です。

――工期自体に無理があったのでしょうか。

奈良 特に最終工程を迎えている現場では、危険作業が行われているケースもあるようです。たとえば、新国立競技場のように設計変更があったために起工が遅れるケースもあります。また、現場で労災事故が発生すれば、原因究明のために工程を止め、結果的に工期が遅れるケースもあります。大手ゼネコンは新工法の導入などで工程の合理化に成功していますが、最終仕上げの段階で整合性が取れなくなり、逆に遅れてしまうケースもあるのかもしれません。

休憩室にエアコンがなく熱中症で搬送
――ほかに、現場の建設職人からはどんな声が上がっていますか。

奈良 「施工管理を行う現場監督が現場を知らないことが多い」との指摘があります。建設職人は多くの現場をこなしているため、現場監督に対して「この工程はこうすれば早くなりますよ」などと提案することができます。しかし、現場監督は「とにかく仕様書や手順書の通りに作業して」の一点張りで聞く耳を持たないそうです。現場監督に権限や経験が足りないため、十分な対応ができないのでしょう。

 新国立競技場の現場をめぐっては、建設職人から「施工管理が素晴らしいので、ほかの現場も見本にすべきだ」「いや、あんなにひどい現場はない」と真逆の意見が上がっています。経験豊富な現場監督の下で働いていると「素晴らしい現場だ」と感じますが、未熟な現場監督の下で働けば「ひどい現場だ」ということになるのです。

――今年の夏も酷暑でしたが、そもそも炎天下での作業自体が危険ではないですか。

奈良 各現場では、責任を持って体調管理をできるかが問われています。休憩室にエアコンがなく、毎日のように建設職人が熱中症で搬送されていた現場もあるようで、非常に危険です。

働き方改革で賃金減少のジレンマ
――建設職人の賃金についてはいかがでしょうか。

奈良 この7年間で公共工事設計労務単価は約40%上がっているので、建設職人の賃金も40%ほど上昇していなければならないのですが、実態調査では数%しか上がっていません。どこかで中抜きされているのでしょう。そのため、今は廃業や離職を選ぶ建設職人も多く、若者が入職してこないという苦しい実態があります。外国人技能実習生についても、仕事の厳しさと賃金を天秤にかけて「建設業にはいかない」という声が増えています。

――このまま苦境が続けば、建設業界の危機は深刻化しますね。

奈良 建設職人の4分の1が60代で、その世代が現場を支えているのが実態です。しかし、その方々もあと数年で現場を離れますから、担い手の育成が急務です。もはや手遅れのような気もしますが、建設業界を挙げて建設職人の処遇改善に務めるしかありません。建設業界でも始まっている働き方改革を軸に変革していくしかありません。

――ただ、建設職人は日給月給制なので、働き方改革によってトータルの賃金が減ってしまうのではないでしょうか。

奈良 アンケートによると、労働者の7割、一人親方の8割が「減る」と回答しています。一方、若者は半数以上が「週休2日がいい」と回答しています。手取りを減らさずに週休2日という働き方に業界全体で変えていく必要があるでしょう。また、建設職人を正規雇用し、日給月給制から月給制に移行することも肝要です。

(構成=長井雄一朗/ライター)

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